AppleがiAdの運用ポリシーを突然変更したことが話題になっている。ある子供向けiPhoneアプリのデベロッパーがブログで報告した内容によれば、5月の1週目を境にアプリ内のiAd広告表示レートが急減し、収入が突然途絶えてしまったという。説明をAppleに求めたところ、「広告主は子供向けプロモーションを望んでいない」とのメールが返信されてきたようだ。iAdの運用ポリシーが変更された初のケースとして注目される。

この件をブログで報告しているのは、Clickable BlissのデベロッパーであるMike Zornek氏だ。同氏の制作したアプリの1つに「Dex」というものがある。これは、任天堂の「ポケモン」に登場するキャラクター一覧を見ることが可能な専用ブラウザだ。同氏によれば、Dexはすでに50万以上のダウンロードがなされており、その特徴の1つにiAdをベースとして無料版を提供している点があるという。アプリの性格から、利用者の多くはiPod touchを所有するティーンエイジャーとなるが、このユーザー層ではIn-App Purchaseを使えないことが多いため、無料版のようなアプリ環境が重要になるというのだ。

ところが5月5日、Dexアプリ内でのiAd Fill Rateが5%になり、その翌日には0%に下がってしまったという。広告のFill Rateとは、広告サーバ(この場合はiAd)への広告表示リクエストに対する広告表示レートだ。つまり広告の表示される確率だと考えていい。通常であれば16.5%程度が平均値だとのことで、これが一気にゼロになってしまったことになる。Fill Rateは土曜日の7日になっても回復せず、同氏がその説明をAppleにメールで求めたほか、開発者向け掲示板で質問したところ、次のような返事が戻ってきたという。

We periodically review the apps in the iAd Network to ensure that all apps receiving ads are aligned with the needs of our advertisers. Currently, our advertisers prefer that their advertising not appear in applications that are targeted for users that are young children, since their products are not targeted at that audience.

We appreciate your understanding.

要約すれば、iAdは継続的に広告ネットワーク内における(iAd対応)アプリのレビューを行っており、それが広告主のニーズを満たしていることを検証しているという。そして現在iAd広告主は若い子供層をターゲットにはしておらず、こうした層をターゲットとしたアプリに広告が表示されることをよしとしないという返事だ。つまり、今後DexでiAd広告が表示されることはないとの説明になる。Zornek氏によれば、現在DexはiAdをメインの収入源としており、代替のAdMobでは無料化には対応しきれず、有料アプリへと移行するしかないとの見解を示している。同氏が憤っているのは、こうした重要な変更が何の事前通知もなしに行われ、さらに現時点でも公式な説明がない点だ。

公にされないだけで、こうした細かい変更が多く行われている可能性もあるが、開発者にとってはこれは死活問題な部分であり、そうした変化や成り行きに注目が集まっている。iAd自体、周辺情報からさまざまな試行錯誤を繰り返している様子が伝わってきており、今回の措置もその一環の可能性がある。そういった施策の1つが料金の値下げで、これまで100万ドルが最低ラインとされてきたiAdの出稿単価が下がり、密かに50万ドルと半額になっていることが報告されている