パナソニックは4月28日、2010年度(2011年3月期)通期の決算概要を発表した。売上高は前年同期比17.2%増となる8兆6926億7200万円、営業利益は同60.3%増の3052億5400万円、税引前利益は前年同期の293億1500万円の損失から1788億700万円の黒字へ、当期純利益も同様に全機の1034億6500万円の損失から740億1700万円の黒字へと益転を果たした。

パナソニックの2010年度通期業績。右は三洋電機分と分けた場合の通期業績

また、2010年度第4四半期(2011年1-3月期)のみの業績は、売上高が国内、海外ともに前年同期比7%減となる1兆1242億円(国内)、9151億円(海外)、営業利益は同32%減となる410億円、税引前損益は前年同期の839億円の損失から354億円改善の485億円の損失、当期純損益も同889億円の損失から482億円改善の407億円の損失となった。税引前損益に営業外で事業構造改革費用を610億円計上したことが損失計上の大きな要因となっているほか、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震ならびにそれにともなう一連の災害(東日本大震災)の影響により、売上高は700億円、営業利益は210億円、税引前利益は302億円、純利益は190億円それぞれ悪化したとする。

2010年度第4四半期の業績

地域別の通期売上高は、日本が前年度比13%増の4兆5143億円、中国が同30%増の1兆1780億円、アジアが同29%増の1兆724億円、米州が同17%増の1兆708億円、欧州が同11%増の8572億円となり、全地域で2桁の増収となった。特にアジアや中国ではパナソニック電工の商品やFA機器、エアコンなどの販売が好調で、増収の牽引役となったという。また日本でもエコポイント制度による集客増を追い風に国内家電営業部門として過去最高の販売を記録したという。

2010年度の地域別業績

セグメント別の通期業績は、「デジタルAVCネットワーク」がBlu-Ray Discレコーダが好調に推移したものの、携帯電話、デジタルカメラなどの売り上げが減少した結果、前年度比3%減の3兆3040億円となったものの営業利益は、売り上げの減少を固定費削減や合理化努力などによりカバーした結果、前年度比276億円増の1149億円となった。

「デジタルAVCネットワーク」セグメントの業績推移

「アプライアンス」では、エアコンや冷蔵庫、コンプレッサの売り上げが伸びた結果、売上高は前年度比6%増となる1兆2759億円となった。特にエアコンは、エコポイントによる実需拡大があった国内に加え、海外でも2桁の増販を達成したほか、コンプレッサも海外が好調で2桁の伸びを達成した。そのため、営業利益も、これら好調な販売に固定費削減などの効果を加えた結果、前年度比で262億円の増益となる923億円、営業利益率も同1.7%良化して7.2%となった。

「アプライアンス」セグメントの業績推移

「電工・パナホーム」は、パナソニック電工が、電子材料や制御機器のデバイス部門や電器部門が好調であったことに加え、電材・住設建材の建築関連部門の売上回復により、増収増益となったほか、パナホームも、住宅市況の回復傾向に伴い、集合、戸建住宅などの建築請負事業の売り上げが堅調に推移し、増収増益となったことから、売上高は同6%増の1兆7350億円、営業利益は730億円となった。

「電工・パナホーム」セグメントの業績推移

「デバイス」は、一般電子部品が堅調に推移したものの、電池や半導体の売り上げが苦戦し、売上高は前年度比1%減となる9263億円、営業利益も、販売減の影響などにより、同35億円の減益となる330億円、営業利益率も0.3%低下の3.6%となった。

「デバイス」セグメントの業績推移

そして「三洋電機」は、太陽光発電システム、車載機器などは堅調に推移したものの、デジタルカメラやリチウムイオン電池などが価格競争激化の影響を受けたことにより売り上げが伸び悩んだ結果、売上高は1兆5619億円となった。また、営業損益は、買収に伴い計上された無形固定資産の償却などもあり、80億円の損失となった。

「三洋電機」の業績

ちなみに、従来、三洋電機が上場会社として発表していたセグメント実績で見ると、車載機器や生活家電が好調だったコンシューマエレクトロニクス部門が増収増益となったほか、電子デバイス部門が増益を達成した以外は売上高ならびに営業利益ともに前年度を下回る結果となっている。

従来のセグメント別に見た三洋電機の2010年度業績

「その他」セグメントは、FA機器の販売が大きく伸長した結果、売上高は前年度比18%増となる1兆1977億円となった。営業利益も、FA機器の増販効果などにより同332億円の改善となる529億円、営業利益率も同2.5ポイント増となる4.4%となった。

「その他」セグメントの業績推移

なお、2011年度(2011年4月~2012年3月)の連結決算見通しについては、東日本大震災の年間を通じた業績への影響を、現時点で見極めることが困難なため、開示を行うことができないとしつつも、同社が震災前に策定した事業計画をベースとする参考情報としての見通しでは、売上高は前年度比1%増の8兆8000億円、営業利益は同2%増の3100億円。税引前利益は営業外損失としてグループ再編に伴う構造改革費用1100億円、円高などによる金融収支悪化による600億円の計1700億円が含まれており、その結果、前年度388億円の悪化となる1400億円、当期純利益も同240億円の悪化となる500億円となっている。また、同社では震災の影響が明らかになり次第、2011年度の業績見通しの開示を行う予定としている。

東日本大震災発生以前に計画していた2011年度の業績見通し。現状では2011年度第1四半期の状況は見えつつも、それ以降の影響がまったく見えないということで、この数値はあくまで参考情報としており、見通しが明らかになった時点で、改めで業績見通しを発表するとしている