リコーは4月27日、同社の2011年3月期(2010年度)通期の決算概要を発表した。売上高は前年度比3.7%減となる1兆9420億1300万円、営業利益は同8.8%減の601億9600万円、税引き前純利益は同21.1%減の454億円、当期純利益は同29.5%減の196億5000万円となった。

リコーの2010年度通期決算概要。右は営業利益の前期比増減分析のグラフ

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響により、当該地域に所在する生産拠点、販売およびサービス拠点、研究開発拠点において設備の損壊などの被害が発生したほか、輸送インフラの寸断、ガソリンなどの供給不足などにより、日本国内を中心に広範にわたり製品の販売・出荷に影響を受けた結果、約94億円の被害損失を計上したという。なお、震災発生直後から災害対策本部を立ち上げ、復旧活動を進めており、生産拠点においては4月中旬までにほぼ通常生産ができる状態に復旧することができたとしており、今後については、在庫部材による生産継続とともに、代替品による部材供給不足の解消を進めることで、製品供給への影響を最小限にどどめたいとしている。

リコー 代表取締役 副社長執行役員の三浦善司氏

同社代表取締役 副社長執行役員の三浦善司氏は、自社の工場はなんとか復旧させたものの、「元々2010年度第4四半期に販売活動を加速して通期営業利益850億円を目指すとしていたが、今回の震災で、生産ができなくなったり、全国規模で営業が商売の話をできる状況ではなくなったり、企業の設備投資への意欲の減退が生じたりと、3月はとにかくどうしようもない状況に陥った」と今回の震災の影響を振り返った。

セグメント別の売上高は、画像&ソリューション分野が売上高は前年度比4.3%減となる1兆7133億円。内訳は画像ソリューションの売上高が同5.7%減の1兆4298億円、ネットワークシステムソリューションの売上高が同3.4%増の2834億円となった。また、産業分野の売上高は同5.1%増の1068億円、その他分野の売上高が同2.0%減の1218億円となった。

画像&ソリューション分野の業績

画像ソリューションの売上高は為替の影響を除く試算では、前年度比で0.8%増加となる。MFPのカラー機の売上高が堅調に推移したほか、プロダクションプリンティング事業においてもカラー機の売上高が増加したものの、モノクロ機の売上が前年度比で減少した。

一方のネットワークシステムソリューションの売上高は、MDS(マネージド・ドキュメント・サービス)やITサービスなどのグローバル展開により、前年度比で3.4%増となった。「ハードウェア分野を高めていく方針であったが、震災の影響を含めて低調な推移となってしまった」(同)とする。

画像&ソリューション分野の2010年度の新製品とサービス。ユニファイド・コミュニケーション・システム事業などへの参入も発表している

産業分野は、半導体事業、光学ユニット事業および電装ユニット事業の売上高が前年度比で増加したものの、「(震災の影響がなければ)もう少し伸ばす予定であった」(同)としている。赤字から黒字に転換した程度となっており、「かなり苦しんでいる。それほどバラ色な状況ではないが、底は打ったので、今後は伸ばして行く方針」(同)とする。

産業分野の業績

その他分野はデジタルカメラなどの宣伝費が負担になったこともあり、赤字となった。2011年度はそうした部分の改革を行っていく方針とする。

その他分野の業績

地域別の業績としては、国内の売上高は前年度比0.1%減の8758億円となり、2011年2月に発表した通期見通しに比べ442億円低い結果となった。震災の影響も含め、個人消費の落ち込みが続いており、半導体や光学ユニットなどの産業分野の売上高が同16.5%増の654億円となったものの、画像&ソリューション分野の売上高が同1.4%減の6921億円となったほか、その他分野もデジタルカメラなどで前年度比で売上高が減少した。また、2010年度第4四半期の営業利益が12億円に低下しているが、これは一時的なものとの見通しを示している。

米州の売上高は前年度比6.4%減の5219億円。個人消費や設備投資が回復しつつあるものの依然として不透明さが続いているが、買収したIKONによる販売体制強化や販売チャネル拡大などが市場の縮小をカバーし、主力の画像&ソリューション分野が伸長したことにより第4四半期単体では黒字化を達成しており、今後、さらなる営業利益の向上を図っていくとしている。

日本と米州の業績推移

欧州の売上高は前年度比9.7%減の4139億円。ユーロ圏におけるユーロ安による域外向け輸出が増加するなど回復傾向は見られるものの、一部の国の財政危機や雇用不安などから域内の経済格差が広がっており不透明な状況が続いているという。なお、為替影響を除く試算では、前年度比4.2%増となり、今後も売り上げ、営業利益の拡大を図っていくとしている。

その他地域の売上高は前年度比5.5%増の1302億円。アジア・太平洋地域に加え、中南米、ロシアに注力しており、特に中国やインドなどの新興国を中心に高い成長を達成したとしている。

欧州とその他地域の業績推移

なお、2012年3月期(2011年度)は米国や新興国を中心に事業成長を見込んでおり、サービス事業を始めとする新規事業の成長を見込んでいるほか、さらなる成長のための新規事業への進出による構造改革と、震災の影響を加味しつつも、売上高は前年度比7.6%増の2兆900億円、営業利益は同16.3%増の700億円、純利益は同47.6%増の290億円との見通しを示している。

2011年度(2012年3月期)の通期業績見通し

新規事業などに向けた構造改革費用を200億円、震災による影響を100億円と見積もりつつも、「そうした影響を含んでの営業利益700億円。今回の震災の被災地は普及から復興へ向かうこととなるが、我々はそこで地域の役に立つビジネスを行いたいと思っている。例えば。東北地域にリサイクル拠点を作り、新規ビジネスとする計画を立てている。我々の従業員も配置転換などを行うし、現地の新規雇用の創出にもつながる。リサイクル事業の拡大を2011年度のテーマの1つにする。大きな工場を作って、という形ではなく、空いてる工場などを活用して事業化したいと思っている」(同)と2011年度のビジネスに向けた意気込みを語った。