米Microsoftは、電子ブックリーダー「nook」を販売する米Barnes & Nobleと、その製造メーカーであるFoxconn International HoldingsとInventecの両社に対し、同社の5つの特許を侵害しているとして米ワシントン州シアトルにある連邦地方裁判所ならびに国際貿易委員会(ITC)に対して訴訟を起こした。米Wall Street Journalなどが3月21日(現地時間)に報じている。nookでは制御用OSにAndroidを使用しており、Googleではなくこれを利用する端末メーカーを狙い打ちした訴訟でMicrosoftがライバルを牽制している形となる。

電子ブックリーダーとしてのnookは北米でのシェアが1割未満と、販売台数からみても大きな市場を獲得しているとは言い難いが、最大の特徴としてAndroidをOSに採用していることが挙げられ、これにより開発コストや期間の短縮のほか、メディアファイル再生などAndroidが標準で備える各種機能を利用できるメリットが存在する。Androidを巡ってはスマートフォン市場で急速にシェアが拡大しており、これを警戒するライバルらの行動が激化している。特にMicrosoftは、Androidの開発元であるGoogleを直接攻撃するのではなく、このAndroidを利用して端末を開発、販売するメーカーを狙い打ちする傾向がある。昨年はAndroid端末ベンダーで著名な台湾HTCを提訴しており、さらに米Motorolaを提訴するなど、主要ベンダーを中心に訴訟が続いている。一方でAppleなどの直接の競合や、(ライセンスですでに合意しているとみられる)SamsungやLGなどのAndroidベンダーは提訴しておらず、結果的に取得特許面で弱いベンダーを狙い打ちする形となっている。今回のnookはAndroidデバイスとして括るのは非常に難しいカテゴリの製品だが、こうした事情からやはりMicrosoftの訴訟のターゲットにされたとみられる。

Microsoft以外では、MotorolaがAppleを提訴し、OracleがJavaバーチャルマシンの実装問題でGoogleを提訴するなど、大手ベンダー同士の訴訟合戦が頻発し、スマートフォン市場が戦場と化している様子がうかがえる。またMicrosoftは電子ブックリーダー市場の最大手であるAmazon.comや、第2位のソニーに対しては訴訟を起こしておらず、あくまでターゲットはAndroidにあることがうかがえる。近年、同社はGoogleが「Androidの利用は無料」としてソフトウェアを拡散させていることを批判しており、ライセンス収益で適切なリターンを特許保持者や開発者に渡すべきとの姿勢を明確化している。

なおWSJによれば、今回指摘された5つの侵害特許のひとつは「バックグラウンドの画像が完全にダウンロードされる前にテキストの閲覧が可能になる」という仕組みであり、もう1つは注釈機能に関するものだという。