東北大学 多元物質科学研究所(多元研)および原子分子材料科学高等研究機構(WPI)は、超臨界アンモニアを用いる「アモノサーマル法」によるGaN結晶成長において、酸性鉱化剤の気相合成法を開発し、育成結晶中の残留酸素濃度が従来の1/100以上低いGaNバルク単結晶の高速育成に成功した。また、これを基板結晶とし、歪みのないGaN結晶や、原子層オーダーで平坦かつ急峻なAlGaNとGaNのヘテロ接合のエピタキシャル成長にも成功、ヘテロ界面に形成される2次元電子ガスの観測も行った。
アモノサーマル結晶育成とヘテロ構造の有機金属化学気相エピタキシャル(MOVPE)成膜技術は、東北大多元研・窒化物ナノエレクトロ二クス材料研究センターの石黒徹研究室ならびに横山千昭研究室、秩父重英研究室とWPIの福田承生研究室が共同体制で開発してきたもの。
アモノサーマル法は、人工水晶の製造に用いられている「水熱合成技術」で用いる超臨界水を超臨界アンモニアで置き換えた、量産に向いたソルボサーマル法だが、窒化物結晶を対象とするため、特殊な鉱化剤を添加した、超臨界圧アンモニア環境に耐えるオートクレーブで結晶育成を行う事が特徴。従来は、400MPaに達する高圧条件で塩基性鉱化剤が用いられてきたが、高圧に耐えるための圧力容器の大型化には工業的限界があり、また、育成速度が遅かったため、低圧かつ高速育成技術の開発が求められていた。
東北大らによる研究グループは、酸性系のハロゲン元素を含む鉱化剤の最適化研究を進め、500℃を超える高温域で、六方晶単相結晶構造を有するGaNバルク単結晶の高速育成技術を開発。同技術は人工水晶製造とほぼ等しい圧力条件である200MPa以下の低圧で、従来技術より約5倍速い高速成長が可能となっている。
アモノサーマル法で育成したGaN中に多く含まれる主要な不純物として酸素があるが、酸素の混入源は、アンモニアガスや鉱化剤に含まれる水分、オートクレーブ内の水分、原料中に含まれる酸素不純物などが考えられている。オートクレーブ内の水分は、真空状態で加熱処理(ベーキング)をすることで除去することができるが、鉱化剤(NH4X)は吸湿性があり、酸素の混入源である上に、昇華性を有するため、ベーキングによる水分の除去が出来なかった。
今回、オートクレーブ中で乾燥したアンモニアガスとハロゲン化水素ガスを反応させて鉱化剤を合成する、気相鉱化剤合成(Gas phase synthesis(GPS))法を開発。同手法は、原料や種結晶、バッフル板などをオートクレーブ内に挿入しベーキング処理をした後、オートクレーブ内にアンモニアガスおよびハロゲン化水素ガスを充填し、オートクレーブ内でハロゲン化アンモニウムを合成するもので、吸湿性を有する固体鉱化剤使用時に1021atoms/ccあった酸素濃度が、これにより1/100の1019atoms/cc台まで減少したことが確認された。
今回開発された高速成長技術を用いることで、Ga極性側のGaN成長速度は従来の約10倍以上になったほか、高純度化技術により不純物密度が低く、本来のGaNの格子定数を有する結晶を育成できるようになったため、GaNデバイス構造の形成が可能となり、アモノサーマルGaN基板上にGaN系デバイスの薄膜エピタキシャル成長に用いられているMOVPE法を用いてGaNを成長させる場合、表面が一分子層の段差程度のレベルで平坦、かつ歪みが無い薄膜成長ができるようになった。
また、GaN系ヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)やLED、レーザの活性層・障壁層を構成するAlGaNとGaNのヘテロ接合を成長させたところ、界面に蓄積される2次元的な電子ガス面(2次元電子ガス:2DEG)を起源とする発光を捉えることができた。
こうした成果を受け、研究チームは、アモノサーマルGaN基板が高性能デバイス用基板としての素養に優れる事を示す結果であり、今後の基板の大型化に期待が寄せられると説明している。
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