スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は27日、日本の外貨建て・自国通貨建て長期ソブリン格付けを、「AA(ダブルA)」から「AA-(ダブルAマイナス)」に引き下げたと発表した。日本の同格付けの格下げは、2002年4月以来8年9カ月ぶりとなる。

外貨建て・自国通貨建て短期ソブリン格付けは、「A-1+」に据え置いた。長期ソブリン格付けのアウトルックは「安定的」である。長期優先債券格付けも「AA」から「AA-」に引き下げた。外国為替規制リスク評価(T&C評価)は引き続き「AAA」。

S&Pによると、格下げは、「日本の政府債務比率がさらに悪化する」との見方を反映している。日本の債務比率は既に格付け先ソブリンの中で最も高いレンジにあるが、さらに、「S&Pが世界的な景気後退以前に予想していた水準を上回る水準まで上昇し、2020年代半ばまで下降に転じないとみている」(S&P)。

なかでも、一般政府財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は、「2010年度の概算値である9.1%から、2013年度には8.0%へと若干の低下にとどまると予想している」(S&P)。中期的には、「大規模な財政再建策が実施されない限り、2020年より前に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡は達成できない」(同)と予測しているという。

「長引くデフレも日本の債務問題をさらに深刻化させている」(S&P)。また、S&Pでは生産年齢人口の高齢化と減少を踏まえ、日本の中期的な成長率を約1%と予測している。

民主党率いる連立与党が参議院選挙で過半数議席を確保できなかったこともあり、「民主党政権には債務問題に対する一貫した戦略が欠けている」(S&P)。また、政府は2011年に社会保障制度と消費税率を含む税制の見直しを行うとしているが、「これにより政府の支払い能力が大幅に改善する可能性は低い」とS&Pは考えているという。

「国債発行額の承認を含めた、2011年度予算案と関連法案が国会の承認を得られない可能性さえある」(S&P)。したがって、国内には引き続き国債に対する強い需要があり、それに対応して超低金利環境が続いているものの、「日本の財政の柔軟性はさらに低下する」とS&Pは予想している。

厳しい財政状況と経済成長見通しの弱さを、高水準の対外純資産と円の国際通貨としての役割によってもたらされる柔軟性に照らし合わせて考慮し、アウトルックは「安定的」とした。S&Pでは、「2000年代前半のように政府が財政再建と成長見通しの改善に向けた施策を実行できれば、格上げを検討する」としている。一方、S&Pが日本の財政見通しを再び引き下げた場合には、「格付けへの下方圧力が再度強まるだろう」としている。