調査会社の米IHS iSuppliは1月12日(現地時間)、2011年のDRAM市場に関する予測を発表した。それによれば、需要を上回る供給が続いたことで今年はDRAM価格の激しい減少が続き、各メーカーの業績を直撃することで、結果として好景気に沸いた2010年のDRAM市場とは対照的な状況が到来することになるという。

iSuppliによる2011年のDRAM市場規模予測は355億ドルで、これは前年2010年の403億ドルから11.8%の減少となる。一方で2010年におけるDRAM市場は2009年との比較で77.5%の成長を実現している。同社によれば、DRAMチップのASP (Average Selling Price)減少は2011年だけでなく、今後数年にわたって続く見込みで、2009年の独Qimonda倒産にみられるような厳しい情勢へとふたたび転落していくことになりそうだ。

世界のDRAM市場規模予測(出典: IHS iSuppli)

またiSuppliによれば、2011年のDRAMのASPは1.44ドルで、昨年2010年の2.61ドルから44.7%の下落となるという。DRAMeXchangeによれば、現在のDDR3 2Gb 256Mx8 1333MHzのブランドメモリのスポット価格は1.81ドルで、前週から小幅の下落となっている。DRAM価格の下落はメーカーにとっては死活問題だが、ユーザーにとっては購入する製品の価格を押し下げる要因となるほか、単位マシンあたりに実装するメモリ容量が増えるというメリットがある。同社シニアアナリストのMike Howard氏は「サプライヤにとっては悪いニュースの一方で、これはコンシューマにとっては吉兆だ。2GBモジュールの価格は現在、半年前の役半額レベルまで落ちており、2011年はPCへのより大容量なDRAM搭載が進むことになるだろう。例えば、2011年には4GBがPCメモリの基本的な搭載量となり、約半数のPCへと波及するだろう。一方で今年いっぱいまでに2GBシステムの割合はわずか6%まで落ち込むはずだ」と予測する。またDDR3へのシフトも進むとみられ、TV等でのシステムを除けば、2011年中に出荷されるほぼすべてのPCがDDR3ベースになるという。

一方、需要のだぶつきが目立つPC市場に対し、DRAMの新たな主戦場として注目されるのがスマートフォンやタブレットなど、モバイル市場デバイス市場だ。搭載メモリ量は少ないながらも、両デバイスを合わせた出荷台数は2011年にPCのそれを5000万台以上上回る見込みだという。一方でこれらデバイスに搭載されるメモリ量も増加しており、2011年の増加幅は62%と、PCの33%を上回っているという。特にタブレットの出荷の伸びは大きく、2012-2013年にはスマートフォンとDRAMの用途シェアで大きく市場を分け合うことになるようだ。こうした形でモバイルDRAMの需要がDRAM市場を牽引することになり、2014年にはDRAM全体のビット数あたりのシェアで16.5%を占めるようになるという。