早稲田大学(早大)の研究グループは、信頼性の高い単一原子ドーピング法を開発し、半導体集積回路に用いられるトランジスタのしきい値電圧が個々のドーパント位置の影響を与えることを明らかにし、その抑制方法を提案した。2010年12月6日から8日かけて米国サンフランシスコで開催された半導体デバイスに関する国際学会「IEDM 2010」において発表された。

トランジスタが発明された1947年より、50年以上にわたり集積会を野高性能化が進められ、現在のトランジスタの最少寸法は30nm程度となり、1チップ上に10億個の素子が集積されるようになってきた。

通常、トランジスタのしきい値電圧を設定するためにドーパントが添加される。これまでドーパントは均一に分布すると仮定されてきたが、極度に微細化したトランジスタではドーパントの離散性が顕在化し、ランダムな分布故にしきい値電圧のバラつきが問題となり、ドーパントを使わないデバイス開発も進められているのが現在の状況だ。

同研究グループでは、単一原子ドーピング法を用いてドーパント個数制御性を高め、トランジスタ中にドーパントの規則的な構造を作り込むことでバラつきを抑制すると共に、駆動電流が増加することを発見した。これはシミュレーションでは予想されていたことであるが、同研究チームにより初めて実証に成功したこととなる。

同成果は、これまで不可能と考えられていたドーパント1個が制御されたトランジスタ研究に道を拓くもので、研究が発展し、低コストで単一ドーパントが精密に制御されることが可能となれば、既存の半導体集積回路技術を少なくとも10年延命することが可能となると研究チームでは説明している。