SAS Institute 上席副社長兼最高マーケティング責任者 ジム・デイビス氏

SAS Institute Japanは11月18日、ソーシャルメディアを活用したマーケティング活動を支援するソリューション「SAS Social Media Analytics」の提供を開始すると発表した。同ソリューションはSaaS形式で提供される。

同社は最近、ソーシャルメディアに注力しており、今回の発表に伴い、米国から上席副社長兼最高マーケティング責任者のジム・デイビスが来日した。同ソリューションは米国ではすでに提供が開始されている。

同氏は初めに「近年、Twitter、Facebook、YouTubeなどソーシャルメディアの利用は増えているが、なかでもFacebookの伸びは目覚ましく、現時点で6億のユーザー数が来年には10億に達すると言われている。Facebookはボランティアの力を借りて70ヵ国の言葉に翻訳されている。フランスでは24時間で翻訳を完成したと言われており、そのパワーを企業は理解すべき」と、企業はソーシャルメディアの影響力を考慮する必要があると訴えた。

ソーシャルメディアの影響力の大きさを示す顕著な例が紹介された。「今年10月、Gapは新たなロゴを発表した。しかし、FacebookやTwitterなどで新ロゴに対するネガティブコメントが続出し、結局、Gapはロゴを元に戻した。今や、それほどソーシャルメディアが企業に与えるインパクトは大きくなっているのだ。また、以前は市場の評価を判断するのに年単位の時間を要していたが、ソーシャルメディアを使えば、すぐにそれがわかる」

左から、Gapの現在も使われているロゴと幻となった新ロゴ

SAS Institute Japan ビジネス開発本部CIグループ部長の高橋昌樹氏

同社は今年、Harvard Business Reviewと共同でソーシャルメディアに関する調査結果を発表したが、その調査において、回答した2,100社のうち、69%が「自社の成功にソーシャルメディアが不可欠」と回答したという。その反面、「ソーシャルメディアを使いこなすには学習が必要」という回答が61%、「効果を測定できるようになるまではソーシャルメディアを使わない」という回答が50%あった。

こうしたことを踏まえ、同社はソーシャルメディアの効果を測定する手段を提供するに至ったというわけだ。

同氏はソーシャルメディアの利用メリットとして、「ブランドの保護」、「市場に対して影響力の大きな人や集団の把握」、「市場調査への活用」などを挙げた。

同ソリューションについては、ビジネス開発本部CIグループ部長の高橋昌樹氏が説明を行った。同氏はまず同社が提供するマーケティング・プラットフォームのうち、同ソリューションが消費者の意見を収集する「Listening」を担うと説明した。

SASが提供するマーケティング・プラットフォーム

同ソリューションは同社の米国のデータセンターのクラウドコンピューティング上で稼働しており、ソーシャルメディアに関するデータ収集、データ管理・分析、レポート作成といった一連のフローがワンストップで提供される。

SAS Social Media Analyticsのプラットフォーム

同ソリューションでは、FacebookなどのSNSサイト、Twitter、YouTube、掲示板、ブログなどのデータを2年以上保管・分析することができる。年内に、「Flickr」、「Yahoo!」、「MySpace」、「Netlog」のAPI、同社のデータアップロードと連携しての企業内データとの統合に対応する予定だ。

収集されたデータは独自のタクソノミ(階層)モデルによって、ブランドテーマの観点から分類され、分類ごとにデータがポジティブかネガティブかが判定される。同氏は、「SASは分析を得意としている企業であるため、ブラックボックス化しているテキスト分析ベンダーなどが提供している製品と異なり、SAS Social Media Analyticsでは設定を調整することができる」と説明した。

同ソリューションは多言語に対応しているも特徴としている。日本語、英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語、ポーランド語、スウェーデン語、アラビア語の13言語ですべての機能がサポートされている。なお、ポジティブ/ネガティブ判定を除けば、SAS製品がサポートしている28言語に対応している。

SAS Social Media Analyticsのダッシュボード。クチコミの傾向を俯瞰することができる

SAS Social Media Analyticsのリアルタイムモニタリングの画面。Twitterのツイートをリアルタイムで監視できる

同ソリューションの導入にあたっては、「SAS Social Media Analyticsクイックスタート・サービス」により、平均して10週間で要件定義、分析タクソノミ定義、レポート稼働までのサービスが提供される。契約は年単位が基本で、導入サービスの料金は500万円程度から、月額利用料金は100万円程度からとなっている。

SAS Social Media Analyticsクイックスタート・サービスの概要