ソフトバンクの孫正義社長

ソフトバンクは、11月4日の新製品発表会の中で、新たに下り通信速度が最大42Mbpsとなる「ULTRA SPEED」サービスを2月下旬以降に開始すると発表した。孫正義社長は、NTTドコモが12月下旬から開始する第4世代(4G)のLTEサービス「Xi(クロッシィ)」に対して、より高速で、人口カバーエリアも広いことをアピールしている。

ULTRA SPEEDは、現行の3G(W-CDMA)サービスの拡張版であるDC-HSDPA方式を利用することで下り通信速度を向上させたサービス。現行の3G規格であるW-CDMAの下り通信を高速化させる規格HSDPAは、1つの帯域(チャネル)で通信を行うが、これを2チャネル(デュアルチャネル=DC)にすることで通信速度を倍速化させる技術だ。もともと規格上は存在しない方式だったが、イー・モバイルらが提案して国際標準化していた。

すでにイー・モバイルがDC-HSDPA方式を用いたサービスの提供を発表しており、ソフトバンクはそれに続くかたち。同社が新たに割り当てられた1.5GHz帯の周波数帯域を利用し、既存の基地局に追加する形でエリアを展開していく計画だ。同社は同周波数帯で4GのLTE実験を行っていたが、この帯域でDC-HSDPAを利用する。

DC-HSDPAを使うことで、理論的には下り最大42Mbpsの通信速度を実現。孫社長は、ULTRA SPEEDの通信速度に対して、ドコモのXiが同37.5Mbps、auが秋から開始する「WIN HIGH SPEED」が同9.2Mbpsであることを挙げ、「日本最高速のサービス」と胸を張る。

各社のサービスとの速度比較。LTEより高速で、auよりは「はるかに高速」(孫社長)

既存の基地局を更新する形で展開できるため、カバーエリアが早急に拡大できるのがメリットで、孫社長も、来年3月の時点で約12%の人口カバー率に対して、6月までには約60%まで拡大できるという。「ドコモ(のXiサービス)の人口カバー率20%になるのが再来年(12年)3月なので、それよりはるかに早く、人口カバー率60%を実現できる」(孫社長)。なお、同様にDC-HSDPAサービスを展開するイー・モバイルは、2011年3月までに40~50%の人口カバー率になることを目指している。

人口カバー率の計画

理論値における下り速度では、Xiよりも高速なため、孫社長は「ドコモより速い速度で、早い地域展開を実現させていきたい」と意気込んでいる。確かに、下り通信速度の理論値はDC-HSDPAの方がXiよりも早いが、LTEは技術的に周波数利用効率が従来の約3倍になり、伝送遅延は約1/4になる(ドコモによる比較)など、既存の技術では実現できない利点もあるため、実環境では理論値での下り通信速度だけの比較はあまり意味がない。

孫社長は「今までの3Gハイスピード(7.2Mbps)に比べて、固定ブロードバンドに匹敵する速度が無線で実現された」と強調。この辺りも孫社長特有の大げさな物言いだが、いずれにしてもソフトバンクの通信速度が大幅に向上するのは間違いない。

現行の3Gハイスピードに比べて、ストレスなく高速通信が可能になる

対応端末としては、モバイル無線LANルータとして中国ZTE製「SoftBank 007Z」、USBスティック型の同「SoftBank 004Z」、中国Huawei製「SoftBank 005HW」の3モデルを用意する。まずは法人専用の004Zを2月下旬に発売し、コンシューマー向けの007Zと005HWは3月下旬から発売する予定だ。

DC-HSDPAはイー・モバイルもサービスをスタートさせるが、両社はパートナーとなっており、今後DC-HSDPAでもサービスの相乗りをする可能性は「十分に考えられる」(孫社長)という。そのため、新発売する3機種の一部はイー・モバイルの電波に対応するそうだ。

なお、孫社長によればULTRA SPEEDサービスでも、現在行われている一定以上の通信量で速度を制限する通信制限の導入も検討しているそうだ。

ソフトバンクでは、DC-HSDPAでXiに対する通信速度の差を埋め、その間にLTEの準備を進めていく考えだ。孫社長はLTEに対して「積極的に考えており、さまざまな実験を行っている。これからベストなタイミングで、ベストな入り方をする」と話している。