Linus Torvalds氏は10月20日(米国時間)、Linuxカーネル 2.6.36を公開したことを発表した。64コアCPUのTirelaアーキテクチャのサポート、新しいファイル通知インタフェースのfanotifyのマージ、AppArmorのメインライン採用など、多くの機能追加および変更が実施されている。
2.6.36で実施された主な変更点は以下の通り。
- Tirelaアーキテクチャのサポート
- 新ファイル通知インタフェース「fanotify」
- KMSとKDB(カーネルデバッガ)の統合
- スレッドプールマネージャによるワークキューの管理
- Intel Core i3/5のインテリジェントパワーシェアリングのサポート
- CIFSにFS-Cache(ローカルキャッシュ)を追加
- デスクトップ周りの不具合の改善 (USBストレージへの書き込み速度の向上など)
- OOM(Out of Memory Killer)のリライト
- AppArmorの取り込み
Tirelaアーキテクチャとは、米Tirelaが開発したマルチコアプロセッサ「TILE64」のこと。シングルチップ上で数百から数千コアまでスケールアウトできるようデザインされており、消費電力効率も非常に高い。バスを格子状に配置することでデータの集中を回避し、タイル(コア)間のコミュニケーションを実施、性能とスケーラビリティを大幅に向上させている。4つのDDR2コントローラ、2つの10GbEインタフェース、2つの4レーンPCIeインタフェースを備える。
新ファイル通知インタフェースのfanotifyは、今回採用されたものの、デフォルトではオフになっている。Linus氏はこれについて、「まだ多くの開発者がこの機能に対して不安定だと感じているため、デフォルトではdisableにした」と説明している。
そして今回のリリースでLinux関係者が注目するのはAppArmorがセキュリティフレームワークとしてメインラインに統合されたことだろう。SELinuxがセキュリティポリシーをファイルに対してラベリングするのに対し、AppArmorはパス名に対してポリシーを適用するのが大きな違いだ。もともとAppArmorは、Red HatによるSELinuxに対抗してNovellが開発したもの。Novellは何度かカーネルのメインラインに取り込むように働きかけたが、結果としてうまくいかなかった。それが今回の正式採用となった背景にはCanonicalの力が大きかったと見られている。UbuntuはUbuntu 7.10(Gusty Gibbon)からAppArmorを採用してきており、カーネルメインラインにAppArmorが採用されたことを受けてCanonicalは「我々の勝利、というより、正しいことが正しくなされただけだ」と表明している。