携帯電話を使っていて気になることの1つはエリア問題だ。人が多くてつながりにくいということもあるが、よくあるケースで問題となるのが自宅や勤務先などがカバーエリア外になる場合だ。フェムトセル(Femtocell)はこうしたコールドスポットを補完する役割を持つソリューションだが、ここ最近になり米国の携帯キャリアが相次いで最新フェムトセル装置の配布を開始して話題になっている。

全米第3位の携帯キャリアである米Sprint Nextelが数週間前から一部ユーザーに対してフェムトセル用のアンテナ装置を無料配布し始めたことを、FierceWirelessが8月20日(現地時間)に報じている。同社のフェムトセル装置である「Airave」はSamsung製だが、2008年からリリースされていた以前のバージョンはCDMA 1xのみに対応し、現行でSprintが提供しているEV-DOサービスには対応していなかった。またこれに呼応する形で全米第1位の携帯キャリアである米Verizon Wirelessが今後数カ月内にEV-DO対応のフェムトセル装置の提供を開始すると、PCWorldの取材に回答している。Verizonは現在フェムトセル装置を「Network Extender」として提供しているが、こちらもSprintのケース同様にCDMA 1xタイプの対応であり、EV-DOの規格には対応しない。高速通信タイプのアンテナは今後出る新装置での対応となる。

一方でこれらライバルとなる全米第2位の米AT&Tでは、今春に「3G MicroCell」というフェムトセル装置の提供を開始している。開発はCisco Systemsで装置自体は150ドルでの販売となっているものの、その利用特典として毎月20ドルの支払いでMicroCell経由での無制限通話が可能になる。AT&Tでは近年回線事情の劣化が大きな問題となっているが、同社では急増するネットワークのトラフィック対応に向けフェムトセルとWi-Fiホットスポットの利用増加を訴えている。MicroCellでもデータ通信は可能だが、月々の利用料金の中に反映されるため、AT&TではWi-Fi対応機種については可能な限りWi-Fiの利用を推奨している。これは前述のSprintやVerizonも同様で、フェムトセル経由でのデータ通信はあくまでWi-Fi非対応機種向けという位置付けだ。

カバーエリアで大きな穴を多数抱える米国だが、フェムトセルの普及でこうした事情の一端が今後時間をかけて解決していくことになるかもしれない。