【インタビュー】

「仮想化向けサーバ選びでは、従来とは異なる考慮が必要」 - IBM 東根作氏

皆さんは、仮想環境で利用する物理サーバにどういったハードウェアスペックが求められるかご存知だろうか。これまでのサーバと同程度という認識の方は注意したほうがよい。というのも、1台のサーバで大量の仮想マシンを動かす仮想環境では、独特のリソース消費特性があるためだ。

では、仮想環境向けにサーバを購入する際には、一体何に気をつけなければならないのか。本誌は、サーバの最新技術動向から企業のニーズまでを知る日本アイ・ビー・エム(以下、IBM) システムx事業部 事業開発 部長の東根作成英氏に話を聞いたので簡単にお伝えしよう。

仮想化に注目が集まる理由

IBM システムx事業部 事業開発 部長の東根作成英氏

まずは、なぜ仮想化が必要なのか。この点を改めて整理しておこう。

東根作氏によると、仮想化に対する需要が高まってきたのは、x86サーバの急激な進化と少なからず関係があるという。

ご存じの通り、x86サーバは、低価格かつ高性能であるが故、サーバ市場において熾烈な販売競争が行われている製品だ。現代のサーバ市場におけるx86サーバ・プラットフォームの出荷台数シェアは、すでに96%を占めると言われている。その購入にかかる費用は低く、部門単位、事業部単位で導入し、ITによる業務効率化を図っている企業も少なくないだろう。

サーバの低価格化により部門単位のシステム構築が進んだ結果、個別最適の運用が優先される傾向は一層強くなった。運用管理の観点から考えると、異なる仕様のサーバが乱立する状況は決して良好とは言えない。イレギュラーな運用対処が増え、管理者の目はどんどん行き届かなくなっていく。技術が進歩しているにも関わらず、IT投資における運用管理の割合が一向に改善しないのは、そのような背景もあるためだろう。

こうした状況を改善するための技術として注目を集め始めたのが「仮想化」だ。

複数のサーバを集約して一元管理を実現する仮想化技術は、全体最適化に適した技術と言える。また、ITリソースを好きなタイミングで必要なだけ割り当てられるため、柔軟な運用をもたらすだけでなく、複数の業務を仮想化で少数のサーバで動作させることにより、物理的なサーバ単位でかかる保守コストなどを大幅に削減することも可能にする。そのほかにもさまざまなメリットが期待できる仮想化技術は、急速に採用件数を増やしている状況だ。本誌読者の中にも、仮想化導入を検討中というシステム管理者は少なくないのではないだろうか。

考慮すべきはメモリ容量

では、仮想化やクラウド環境を念頭に置いてサーバを購入する際には、何を考慮すべきなのか。

この問いに対して、東根作氏が真っ先に挙げるのが「メモリ容量」である。一般的な感覚では、マシンの心臓部分にあたるCPUのコア数で処理能力を計算したくなるが、東根作氏によると現在のx86サーバでは、いかに大容量のメモリ領域を確保できるかでシステム全体のパフォーマンスが左右されるのだという。

「仮想環境で利用される次世代のサーバで、ボトルネックとなりがちなのはメモリ容量。この部分を拡張し、ワークロードの急増とデータの爆発的な増加に対応できる能力が第一に求められます」(東根作氏)

CPUの性能が劇的な向上を続ける昨今、トランザクションの処理能力は10年間で約60倍に達している。一方で、メモリ容量に目を移すと、その進化の速度は10年間で32倍程度。CPUに比べて約半分ほどのスピードでしか拡大していない。そのため、仮想化による集約率をCPUに主体を置いて計算した場合、メモリ容量が不足する傾向にあるようだ。

こうしたメモリ増加の必要性は、同社が行ったユーザー環境で実際に動作しているサーバについての調査結果でも明らかになっている。

「調査のデータを2006年と2009年で比較した場合、お客様先で動いているサーバのプロセッサについては絶対性能の差があるものの、使用されている相対的な処理能力自体は3年間でほとんど変わっていませんでした。一方、メモリに関しては平均で約2倍、ピーク時で約2.5倍も使用量が増加しています。64bit OSをも視野に入れる今後のサーバ統合を考えた場合、これまで以上に統合先となるサーバの搭載メモリ容量が必要となることは明らかです」(東根作氏)

仮想環境における"メモリ問題"をいかにして解消すべきか。この課題はシステムの規模が大きくなればなるほど深刻さを増すことになる。

IBMが出した答え

上記のような問題に対する解決策として、IBMが今年3月にリリースしたのが、x86サーバ「System x」向けの最新技術、第五世代エンタープライズ・X-アーキテクチャ、通称「eX5(エックスファイブ)」だ。

eX5は一般的なx86サーバと比較していくつかの強力な特徴を備えているが、その中でも特筆すべきがメモリ拡張ユニット「MAX5」の存在だ。従来のIBM製x86サーバでは最大で1TBまでしか対応できなかったメモリ容量を、最大3TB(4Uラック型サーバ使用時)まで拡張している。DIMMスロットの最大搭載数は実に192個。より多くのメモリが必要なワークロードに対応できるだけでなく、安価なメモリを数多く搭載してコストを削減する、といった用途にも対応している。

eX5を搭載したサーバ群は2Uラック型/4Uラック型/ブレード型の3タイプで提供されるが、いずれのタイプでもこのメモリー拡張ユニット「MAX5」の増設が可能な点は見逃せないポイントと言える。たとえば2Uのラック型サーバ(32DIMMスロット、最大512MB)にメモリ増設用の1U筺体を接続すると、メモリ容量を倍増(64DIMMスロット、最大1TB)させることが可能。ブレード型も同様に、メモリ増設用のMAX5ブレードを追加すれば2枚分の厚さで40DIMMスロットを装備したブレードサーバが構築できるのである。 ここで注目したいのが、メモリ容量を大幅に拡充しながらもCPUの数自体が変わらないこと。ご存知の通り、現在、多くのソフトウェアライセンスは物理プロセッサの数をベースに課金が行われている。そのため、メモリ容量がボトルネックとなり、CPUの処理能力に余裕がある現状では、物理プロセッサの数を変えずにメモリ容量だけを拡大し、集約率がアップすれば、ライセンスコストが削減できるわけだ。

「同じ2CPUの製品で比べた場合、他社製品に対して弊社のサーバは約82%も多くの仮想マシンが入れられます。逆に、同じメモリ容量を実装できるサーバ同士で比較すると、弊社が2CPUで実装できるものが他社では4CPUとなり、必然的にライセンス料金も2倍となるわけです」(東根作氏)

このように、メモリの増加はより多くのサーバ集約を可能にするだけでなく、ITコストの大幅な削減にもつながるようだ。

*  *  *

本稿では、仮想化とx86サーバの関係性のうち、メモリ容量にのみを取り上げてお伝えしてきたが、東根作氏は、仮想化向けサーバを選ぶ際の重要項目としてそのほかにもネットワーク機能などを挙げていた。

そうした他の考慮点などについては、9月1日開催の技術セミナー『ジャーナルITサミット 2010 仮想化 - 仮想化導入の必須知識をまとめて学べる実践講座』で深く解説していく予定である。興味のある方はぜひ参加してもらいたい。

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