1年ほど休眠していた当コーナーであるが、ふたたび復活してみました。あらためて、米航空宇宙局(NASA)が提供してくれる、人類の至宝とも言うべきうつくしい写真の数々を紹介していければと思う。

さて、復活して最初にお届けするのは、土星の衛星のひとつ「エンケラドゥス(Enceladus)」の三日月写真(と呼ぶにはあまりに細すぎるが…)である。このエンケラドゥス、同じ土星の衛星のタイタンやディオネに比べるとこれまであまりメジャーではない存在だった。しかし、最近の調査によると、この6番目に大きい土星の衛星、実はけっこう活発なヤツだということがわかってきたのである。

土星探査機「カッシーニ」のフライバイによって8月13日に撮影されたばかりのエンケラドゥスの姿。約34万8,900km離れたところから撮影している(ちなみに地球から月の距離は約38万4,400km)。クリアフィルタとグリーンフィルタが使われて撮影された

何となく、味気なく見えるかもしれないが、このか細い光の帯の中には貴重なデータが数多く詰まっている。

エンケラドゥスの南半球部分には"タイガーストライプ(Tiger Stripes)"と呼ばれる巨大なひび割れがある。ここからブルームと呼ばれる水蒸気が活発に噴出し、わずかではあるが大気としてこの星を覆っていることが、カッシーニの調査により判明したのだ。ブルームには水蒸気だけでなくなんと有機物も含まれているらしい。カッシーニはさらなる調査を重ねるべく、今回のフライバイで数多くのエンケラドゥスの写真を収めた。これはそのうちの1枚である。

カッシーニには赤外分光計が取り付けられており、科学者たちはこれでエンケラドゥスの表面温度を分析する。今、この星の南半球は冬に入り、可視光で見える部分はこのようにわずかしかないが、それでも十分なデータが得られるという。温度が高いところには水蒸気のもととなる何か - たとえば氷の火山とか - が近くにあるはずだ。もしかしたら生命が存在する可能性にもつながる……のかもしれない。