米Skyhook Wirelessが提供するWi-Fiアクセスポイントを利用した位置情報検出技術は、初代iPhoneへの導入以来、iOSやMac OS Xの標準機能として長らく利用されてきた。だが4月のiPad発売以降、具体的にはiOS 3.2以降のバージョンで、米Appleは独自の位置情報検出システムを採用しており、Skyhookは最大の顧客を失った可能性が指摘されている。米Wall Street journalが7月30日(現地時間)に伝えている。

この話題は、2人の米共和党議員がAppleに送った同社の位置情報収集ポリシーについての公開質問状に対して、同社が7月12日に公開した回答に記されていた内容に由来する。ここで同社は4月のiOS 3.2リリース以降、位置情報取得に同社の独自技術を利用していることを公表した。Appleは位置に応じたサービス提供のためにユーザーの機器から位置情報を取得する旨を最新のソフトウェア利用規約の中で明記しており(iAdでの広告サービス提供のためだとみられる)、上記議員の質問状はこのAppleの動きに懸念を示したことに端を発する。

WSJによれば、上記に関連してSkyhook Wireless CEOのTed Morgan氏に質問したところ「手紙の内容は事実であり、Appleは独自技術の一部を利用し始めている」とコメントしている。Appleはこの件についてコメントしていないものの、Morgan氏の説明を基にすれば、完全ではないにしろ、Appleは自身のソフトウェア内の位置情報取得システムを独自の技術で順次置き換えつつあるようだ。同様の位置情報取得技術は、Googleをはじめとする複数のベンダーが提供しているが、本来Googleが有力だとされていたApple/iPhone向けのサービス契約を2007年当時にSkyhookが勝ち取ったことは、Skyhookのようなベンチャー企業にとって非常に大きな意味があると報じられていた。

近年のAppleは、他社の持つサービスや技術を利用して素早く効率的にシステムを構築するよりも、有力なベンチャー企業を買収し、その技術を自身で抱えるシステム内製化を進める傾向が強い。代表的なものがQuattro Wireless買収によるiAdの提供で、現在はまだ表立った行動には出ていないものの、サードパーティ(特にライバルであるGoogle)排除の姿勢を鮮明にしている。またAppleは最近になり地図情報システム企業2社を買収しており、近々iOSやMac OS X上のアプリケーション内で利用されているGoogle Mapsの機能を廃止し、独自の地図システムで置き換えるのではないかと噂されている。

今回の位置情報取得技術も同様で、今年3月にはPlaceEngineを利用したiPhoneアプリが多数公開停止になっている。時期を考えれば、ちょうどiOS 3.2が発表される直前の出来事であり、Appleが独自に構築した位置情報取得データベースへの移行期にあたる。こうした、Appleの提供するサービスや技術とバッティングするサードパーティのサービスは排除される傾向があり、ある意味でiOSにおけるアプリ開発のリスクの1つだといえるだろう。