浜松ホトニクスは7月29日、紫外域の感度を有するGaNを用いて紫外域の透過型光電面の実用化に成功したことを発表した。

青色発光ダイオードに用いられるGaNの結晶成長では、製造コストを削減するために従来のサファイア基板からSi基板を用いた結晶成長技術が開発されており、Si基板上でも良質なエピタキシャル薄膜の結晶成長が可能となりつつある。これにより汎用の半導体製造装置を用いた処理が可能となるなどの利点を得られるようになり、エッチングによる除去などの加工容易性も得られるようになる。

同社では、同技術を応用、Si基板上に緩衝層を介してGaNを結晶成長したものをガラス窓に接着した後、GaN薄膜だけを残す技術を開発した。また、光を用いて結晶表面を清浄化することで量子効率の改善にも成功したという。

これらにより、紫外域で高い量子効率、可視域ではほとんど感度がなく、低暗電流という特性を持ち、エッチングによる薄膜化を行うため大面積で均一性が良好な光電面が得られるようになったほか、高い特性でありながら低コスト化を図ることも可能となった。

現在、紫外域光電面材料として用いられているCs-Teは、波長280nmで量子効率15%だが、今回開発された技術を用いると、現段階において同波長で量子効率21.5%を達成。2011年春の製品化の段階では、Cs-Te比で約3倍の量子効率40%を目指すとしている。

GaN光電面(量子効率目標値40%想定)とCs-Te光電面の分光感度特性比較図

製品化としては、微弱光検出とマルチチャンネル(2次元)での計測時間短縮が特長の紫外イメージインテンシファイア(紫外I.I.)に採用し、半導体のウェハ検査や、高速現象の測定要求が高まっているラマン分光、高圧電線のコロナ放電検査などの分野への応用を図っていくという。また、今後、紫外域の半導体レーザーの開発が進めば、さらに適用分野の幅を広げていけるものと見ているという。

なお、同技術は、静岡大学工学部電気電子工学科 福家俊郎教授の研究室と共同で開発したもので、サンケン電気よりSi基板上のGaNウェハの技術支援を受け、開発の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「産業技術研究助成事業」によって実施された。

開発中の紫外イメージインテンシファイア