リニューアルされた第3世代のKindle。189ドルのKindle 3G+Wi-Fiと、139ドルのKindle Wi-Fiの2モデルが新たに追加された。前世代のKindle 2にくらべ、画面サイズそのままに全体に小型化されている

値下げによる販売合戦が熾烈化している電子ブックリーダーの世界だが、業界のリーダーからライバルらを牽制すべく新たな2製品が登場した。米Amazon.comは7月28日(現地時間)、従来のKindle 2をリフレッシュし、6インチの画面サイズはそのままに本体を小型軽量化したモデル(189ドル)と、3G通信機能を省いて139ドルへの値下げを行ったWi-Fiオンリーの廉価モデルを発表した。これで9.7インチのKindle DXと合わせ、3種類のモデルがラインナップされたことになる。提供開始は8月27日以降で、世界140カ国以上の同時リリースとなる。

今回発表されたKindleは第3世代にあたる。スクリーンサイズや基本的機能は前世代のKindle 2を踏襲しているが、画面サイズはそのままに筐体サイズが21%小型化されているほか、重量も8.7オンス(247グラム)と15%ほど軽量化されており、携帯性が向上している。またE-Inkディスプレイもコントラストが向上して見やすくなっているほか、機能面ではスピードアップが図られており、ページめくり速度が20%ほど高速化。ストレージ容量の倍増、Webブラウザ機能のWebKitベースへの刷新も図られた。

また今回の最大の特徴として、従来の3G通信機能に加えてWi-Fi接続機能を搭載したことが挙げられる。KindleではWhispernetという仕組みを利用して、3Gネットワークが利用できる場所であればどこでも本のダウンロードやブックマークの同期が行える点がセールスポイントとなっている。Whispernetは無料で利用できるため、通信速度こそ遅いものの、これを利用して内蔵WebブラウザによるWebアクセスが自在に行える点もKindleの特徴だ。だが今回Wi-Fi機能が新たに付与されたことで、より高速なWebアクセスも可能になった。また同時に、今回のKindleでは3G機能を省いたWi-Fiオンリーモデルを廉価版として別途リリースしている。これはライバルの米Barnes & Nobleが電子ブックリーダー「nook」のWi-Fi版を149ドルでリリースしたことに対抗したものとみられるが、Kindle Wi-Fiの価格は139ドルであり、nook Wi-Fiよりも10ドルほど安くなっている。なお、Kindle 3G+Wi-Fiでは白黒の2種類の筐体が用意され、Kindle Wi-Fiでは黒のみとなっている。

値下げ以降に3倍ペースで販売が伸びたKindle 2、ついに売り切れ

先日23日に第2四半期決算を発表した同社によれば、ライバルであるB&Nのnook値下げに対抗してKindle 2の価格を259ドルから189ドルへと値下げして以降、Kindleの売上が驚異的なペースで伸びており、そのメインコンテンツである電子ブックは同社のハードカバー本の販売部数を上回るといった状況になっている。これを象徴するのがKindle 2の在庫切れで、現在Amazon.comのKindleページへとアクセスすると画面には「Temporarily out of stock」と表示されており、売り切れで購入できないことがわかる。だが売り切れが話題になった直後にSan Francisco Chronicleが掲載した記事で、Kindle 2のページに「Temporarily out of stock」とともに「There is a newer model of this item.」というメッセージが表示されていたことを指摘していたように、新製品が間もなく登場する可能性が高く、在庫切れは新製品への入れ替えが発生していることを示すものだという意見が多かった。

最新版Kindleの出荷が8月末のため、今後1カ月はKindleが入手できないことになるが、値下げ後にKindle 2の販売台数が一気に伸びたことを考えれば、新版の出荷開始と同時に一気に台数が出ることが予想される。現在Amazon.comはKindle新版の事前注文を受け付けており、興味あるユーザーは同社サイトにアクセスしてみるといいだろう。

Amazon.comが説明するように、電子ブックリーダーの普及速度が値下げ以降に加速していることを考えれば、こうした価格競争は電子ブックの普及に大きく貢献する可能性が高い。ユーザーとしてみれば安価に良質なコンテンツが入手できる可能性が高まるわけで、嬉しいトレンドだといえるかもしれない。