Conde Nastは26日(米国時間)、iPad用アプリ「WIRED Magazine」を公開した。同アプリは現在App Storeで4.99ドル(600円)で販売されている。

Conde NastのiPadマガジンとしてはすでに「Vogue」などが公開されているが、それらと同様、WIRED MagazineもiBooksではなくアプリ形式での配信となっている。WIRED MagazineはもともとAdobeの「Packager for iPhone」を使って開発されていたこともあり、AppleのSDK規約変更を受けてアプリの作り直しに時間をとられていたようだ。

26日にようやく正式デビューした「WIRED Magazine」

WIRED Magazineのアプリは、今年1月末のiPad正式発表の時点ですでに開発が進んでおり、2月の時点ですでに実動デモが紹介されていたほどだ。Conde NastはWIRED Magazineの専用リーダーを昨年夏頃からAdobe Creative Suite 4(CS4)上で構築しており、これをAIRアプリとして動作させることでPC上でのデモを可能にしていた。

当初の計画では、Adobe CS5に搭載予定のFlashコンテンツのiPhoneアプリ書き出し機能である「Packager for iPhone」を使って、PCやスマートフォン向けのAIRアプリ、iPhone / iPad向けのアプリという形でプラットフォームをまたいだマガジンアプリのリリースを行う予定だったようだが、前述のAppleの規約変更でこの計画は頓挫してしまい、その後どのように対応が行われるのかに注目が集まっていた。

Wall Street Journalによれば、Appleの規約変更を受けたConde NastとAdobeは制限回避の道を模索し、結局Appleの規約に引っかからない形でアプリのコードをすべて書き直して対応したようだ。

アプリとして1から構築されただけあり、このWIRED Magazineは通常の紙の雑誌では実現できないさまざまな機能が実装されている。動画やアニメーション効果はさることながら、それらをより効果的に見せることに重点が置かれている。例えば初回のテーマは間もなく公開予定の映画「Toy Story 3」だが、アニメーションが実際に制作される過程をシーンごとに細かく追うことができる。また火星探索のコーナーがあり、ここでは画面上に表示されるイメージの解説をポップアップで細かく逐次参照できるなど、図鑑的な要素も持っている。このほか、レゴでランボルギーニを組み立てるオマケコーナーなど、iPadアプリならではの楽しみ方が可能だ。

また「Apple iPadをめぐる、雑誌出版社の2つの苦悩 - Financial Times」でも紹介したが、雑誌出版社らがAppleのiBookstoreでの電子書籍配信に抵抗している理由として、サブスクリプションを提供する方法がないことが挙げられる。WSJによれば、Conde Nastは当初はWIRED Magazineを単体のアプリとして提供するが、今年秋には念願のサブスクリプションをiTunes経由で提供していくという。課金方法は不明だが、おそらくアプリ内課金のシステムを使って最新号への更新を可能にするものとみられる。このほかConde Nastでは、iPad以外のプラットフォームにもデジタルマガジンを拡大していく計画だという。