富士通研究所は、C帯、X帯、Ku帯(C~Ku帯)の3帯域である6~18GHzの帯域で動作し、従来比2倍となる12.9Wの出力を有するGaN HEMT増幅器の開発に成功したことを発表した。

広帯域増幅器には、複数のシステムが使用する周波数で動作する広帯域特性と、広いエリアをカバーするための高出力特性が求められています。

C~Ku帯のような広帯域で高出力を実現するために、従来は複数のGaAsトランジスタを並列に接続した増幅回路が用いられていた。これは、トランジスタの数を増やせば出力を増やすことができるが、同時に回路が長くなるため配線損失が大きくなり、18GHzまでの帯域を確保することが困難という課題もあった。

今回、同社では、高周波での配線損失を低減する「超広帯域整合回路」を考案、増幅器に適用した。同整合回路は、増幅器から出力される高周波の信号の損失を低減することで帯域を拡大することが可能だ。

また、超広帯域で電力分配と電力合成をおこなう回路も開発、半導体基板上に作り込むことで、広い周波数で出力を2倍に向上させることが可能となった。

回路模式図

開発したC~Ku帯増幅器

これらの技術を活用したGaN HEMTを用いた増幅器は、6~18GHzの広帯域で出力12.9W、投入直流電力が高周波出力電力-高周波入力電力に変換される効率として18%を実現した。これにより、従来の超広帯域・高出力増幅器に比べ出力2倍向上が実現された。

C~Ku帯超広帯域増幅器の性能比較

同技術により、単一の増幅器で複数の周波数の使用が可能となり、広帯域通信や周波数を使い分けるレーダーなどのシステム統合を進めることが可能となり、機器の小型・軽量化が期待できるようになることから、今後、広帯域にわたって高い出力が要求されるワイヤレス通信機器やレーダー機器などに適用していく予定としている。

C~Ku帯の多機能レーダーのイメージ図