東京都市大学総合研究所 シリコンナノ科学研究センターは2010年5月24日、Siをべ一スとして、高効率に発光する電流注入型の発光デバイスの開発に成功したことを発表した。
今回開発した発光デバイスは、2006年7月に同研究センターにて開発したGe量子ドット構造に、発生した光の強度を高めるための微小共振器を組み合わせることで、外部からの電流注入によって発光させるようにしたものである。
使用したGe量子ドットは直径が100nm以下で、熱成長によって形成する。このGe量子ドットは、電子を極めて狭い領域に閉じ込め、発光再結合確立を高めることで、室温でに発光を可能にする。しかし、これだけでは発光強度が弱く、また発光スペクトルが幅広いものであり、信号伝達などに使用することは難しいものであった。さらに、外部からの光を吸収した場合にのみ発光するため、電子回路に組み込んで発光を制御することができなかった。
そこで、前述のように光を閉じ込める微小共振器により、光強度を増強、波長を特定領域に制御できるようにすると同時に、電子回路に組み込むことのできる電流注入型デバイスを実現した。今回のデバイス構造としては、まず、SiのSOI基板上にGe量子ドットの多層膜を形成、その上下にホール(正孔)が多数を占めるp型Siと、電子が多数を占めるn型Siで挟み込み、外部から電流が注入できる構造(PINダイオード構造)とした(図1:デバイス構造、図2:断面図)。
さらにGe量子ドットで生じた発光が外部に漏れないように、全体の構造を微小な円形構造であるマイクロディスク形状に加工している。マイクロディスクの直径が発光波長と同程度まで微細化されると、発光はディスク内部で円周方向に共振し、光強度が増幅されるという特性を積極的に活用することで、電流注入による室温で高効率発光に成功した(図3:デバイスの電子顕微鏡写真)。
発光効率を示す量子効率は10-2で、競合技術と比較して最高水準を実現している。また、注入電流にしたがって発光強度が強まる注入電流依存性も確認されている。さらに、Ge量子ドット形成も含めてデバイス構造形成は既存のCMOSプロセスで行うことができるため、製造面からみても導入しやすいものとなっている。
今回開発したデバイスのメリット、可能性としては、光信号を利用することで、配線遅延を極限まで低減し、LSIの高速化が可能となる、光の特長を生かした並列演算が可能、電気配線による発熱が起こらない、光と電気を融合した新しい機能デバイスの開発が可能といった点があげられる。
LSI内部の光配線に必要となるシリコンレーザ実現に向け飛躍的な前進であるとしている。しかし、超高速のモジュレータ、ディテクタを利用することで、発振レーザとしなくてもEL光でも極近距離の伝送であれば応用することが可能としている。
今後は今回のマイクロディスク構造だけでなく、より発光波長の制御性を高めることのできるフォトニクス結晶を利用した微小共振器デバイスの開発も進めていく(図4)。
なお、この研究は文部科学省の 「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」(次世代LSIに向けた新機能シリコン系ナノ電子・ガ・スピンデバイスの創出)の一環として実施されたものである。
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