宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月23日、21日6時58分22秒に打ち上げた金星探査機「あかつき(PLANET-C)」および小型ソーラー電力セイル「IKAROS」の打ち上げ後の運用状況報告を行った。

あかつきはH-IIAロケット 17号機より分離後、午前10時00分に米国のDSN(Deep Space Network)であるゴールドストーン局に入感、その後テレメトリ受信を行い、太陽電池パドルの展開が正常に行われたことが確認された。

また同日、日本の内之浦宇宙空間観測所において標準姿勢制御モード(3軸姿勢制御モード)への移行を確認、同20時にクリティカル運用期間を終了し、現在は初期機能確認運用を進めている段階としている。

なお、当初打ち上げ13時間後頃に予定していた初期軌道修正については、DSN(ゴールドストーン局およびキャンベラ局)のレンジングによる軌道決定の結果、H-IIAロケットによる軌道投入精度が良好であったことから、不要であると判断され、予定よりも早く搭載機器の立ち上げを開始、中赤外線(LIR)、紫外線イメージャ(UVI)、1μmカメラ(IR1)の3台を立ち上げ、機器の状態確認のために地球の撮影に成功した。

撮影された地球の画像は、あかつきが地球との距離約25万km付近で撮影したもので、あかつきから見た地球の視直径は約3度、地球を夜の方向から見た形となっている。また、残りの機器である2μmカメラ(IR2)、雷・大気光カメラ(LAC)、超高安定発信器(USO)については、「USOは比較的早い段階での立ち上げが可能と見ているが、LACは高圧状態なので、それが収まるために1カ月程度、IR2は機体に残留しているガスが抜けきる必要がある関係上、やはりそれを待ってからの立ち上げとなる」(PLANET-Cプロジェクトマネージャの中村正人氏)としている。

中間赤外カメラ(LIR)による地球の映像(提供:JAXA)

紫外線イメージャ(UVI)による地球の映像(提供:JAXA)

1μmカメラ(IR1)による地球の映像(提供:JAXA)

一方のIKAROSは、DSNを使用しないため、日本の局で受信するまで不明であったが、可視時間である21日の17時頃よりチェックを開始、まず内之浦局で電波を確認、その後同日19時頃に臼田局にてテレメトリ受信に成功、太陽電池の発電と姿勢が正常であることを確認、通信の確立に成功したという。

また、次の日となる22日にはやはり日本からの可視時間においてミッション系を立ち上げ、「ここまではミッションの遂行に問題ないことが確認されている」(IKAROSデモンストレーションチーム長の森治氏)とのことで、6月上旬までに順次ソーラーセイル用の膜が展開される(ミニマムサクセス)予定となっており、その後、さらに膜に取り付けられたダストカウンタ、太陽電池など4つのオプションも順次稼動予定としている。

なお、5月23日時点で、あかつき、IKAROSともに約40~50万km/日の速度で地球から離れていっており、今後、金星を目指した運用が本格化していくこととなる。