米Googleは20日(現地時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたGoogle I/Oカンファレンスで「Google TV」を正式発表した。TVコンテンツとWebをシームレスにつなぐ仕組みが特徴で、検索窓を通した統合検索や携帯からのリモート操作など、Googleらしい仕掛けが用意されている。OSにはAndroidを採用し、ハードウェア提供のパートナーとしてIntel、ソニー、Logitech、ソフトウェア提供にはAdobe、サービス提供にDish Network、販売パートナーにBest Buyと計7社によるアライアンスを組んでいる。

「Google TV」

「Google TV」における4つの特徴。要約すれば、よりコンテンツを楽しむことに集中し、「単なるTV以上の楽しみ方ができるTV」ということだ

米Google会長兼CEOのEric Schmidt氏。今回アライアンスを組んだ7社のパートナー企業のトップが一堂に会して壮観だ

またソニーが、Google TVプラットフォームベースの「Sony Internet TV」の開発が進行中であることを発表。このSony Internet TVは、まず米国にて、2010年秋をめどにディスプレイ一体型と、Blu-ray Discドライブを組み込んだセットトップボックス型の2タイプを発売する予定としている。

「Google TV」(Sony Internet TV)。ソニー製であり、これだけみれば普通のTVと変わらない

番組プログラムを選択中のところ。画面の例ではDish Networkのプログラムと連動している

検索窓がナビゲーションの中心となる。キーワードを入力すると、次々に番組やコンテンツ候補が表示される。TV番組のほか、普通のWeb検索も同じ一覧に出てくる

番組名が絞れるキーワードであれば、TVネットワーク名だけでなく、放映予定時間まで表示される。これがもし後の時間のものであれば、そのまま録画予約へと移行する

TV番組以外のネットワークコンテンツも表示できる。これはTVドラマのオンデマンド配信状況を、各エピソードごとに一覧表示させたところ。例としてAmazonを選択すると、「Amazon Video On-Demand」サイトで番組コンテンツやトレーラーを表示できる

「Google TV」ならではの面白い機能のもう1つがキャプション機能だ。YouTubeなどで導入された自動翻訳によるキャプション機能だが、聴覚補助という役割だけでなく、日本語音声やキャプションのない米国映画やTVを誰もが楽しめるというメリットがある

既報のように、Google TVはIntelのSoCであるCE4100をプロセッサコアとし、TVコンテンツの表示や各種メニュー、Webアクセス、周辺機器との通信を行う形態をとる。ハードウェアは3種類のデザインが用意され、先に挙げたようにソニーからは同機能を内蔵したTVとBDプレイヤーが、Logitechはセットトップボックス(STB)やCATVモデムなどと連動するコントロールボックスがそれぞれ提供される。後者2つのハードウェアはTVとインターネットに接続するだけで、Google TVとしての環境を構築できる。OSとしてAndroidを採用したことでAndroid Marketを通して各種Androidアプリがそのまま利用できるほか、WebブラウザにChrome、そしてフル機能のFlash 10.1を採用したことでTVでフルブラウザによるネットアクセス環境が楽しめるようになっている。

Andorid Marketも利用でき、そのままAndroidアプリをダウンロードして楽しめる

フル機能Flashをサポートしているのも大きい。YouTubeのようなHTML5対応サイトだけでなく、さまざまな動画サイトやアニメーション、ゲームコンテンツがそのまま楽しめる

それぞれの機器がネットワークでつながっていることが前提となる。一種のネットワーク家電だ

Google TVに対応した機器であれば無線LANを介して互いに通信を行うことが可能で、例えば無線キーボードやリモコン、携帯電話などのデバイスを通してリモートコントロールが自由に行えるほか、デジタルビデオレコーダ(DVR)との連動、モバイル機器や他のディスプレイ装置での閲覧など、ネットワーク機能を最大限に活用している。

また最大の特徴は検索窓を共通インタフェースに各種操作をまとめて行える点で、例えばキーワードを入力して放映中の番組を探したり、後の時間に放映する番組であれば検索結果からそのまま予約録画が指定できる。検索結果はTVコンテンツだけでなく、録画された番組一覧やYouTubeコンテンツ、NetflixやAmazonのオンデマンド配信、Flickrのデータなど、種類をまたいだ横断的な検索が可能になっている。検索はキーワード入力だけでなく、Googleモバイル検索ではお馴染みの音声入力も可能になっており、ハンズフリーでのナビゲーションが可能だ。

Android+Chromeである以上、普通にWebコンテンツも表示できる。検索窓でのキーワード検索でWebサイトを指定すると、このような画面で検索結果が表示される

面白い事例としては、NBAのゲームをPicture-in-Picture機能で画面端で表示しつつ、ゲームスコアや選手データをWebサイトで確認するといった使い方も可能

Flickrのような写真共有サービスもそのまま楽しめる。写真を拡大してスライドショーにすれば、大画面TVのメリットを最大限に活用できる

「Google TV」ならではの面白い機能の1つが音声認識。「Nexus One」などの携帯電話を使ってTVのリモートコントロールが可能だが、音声検索を使ってそのまましゃべったキーワードを検索クエリーに取り込める

今回のアライアンスに名前が挙がっているDish Networkでは、これまで同社顧客400人を対象にGoogle TVのベータテストを実施しており、その結果を反映して各コンテンツが完全に最適化されているという。こうしたGoogle TV製品はBest Buyの全米店舗を通して販売されることになる。日本での展開については不明だが、Googleとソニーは同日にAndroidを核にしたクラウドベースの家電製品を展開するためのジョイントベンチャー設立を発表しており、今後日本を含む世界で順次展開が進むことになるとみられる。

また、Androidを採用したことで開発者にオープンなプラットフォームであることを標榜しており、Googleとしてはこのエコシステムを基盤にどんどんプラットフォームを拡張してほしいと開発者らに訴えている。開発者支援としてはまず、Google TV向けのAPIセットを公開し、これに対応したAndroid SDKのアップデータを今年末までに提供するという。このAPIセットを利用することで既存のWebサイトをGoogle TV対応可能なほか、アップデートされたAndroid SDKを使ってGoogle TV対応アプリの開発が可能になっている。

開発者向けのGoogle TVリリーススケジュール。まずGoogle TV APIが公開されるので、それでWebサイトのTV対応を進めた後、2011年に各種SDKやAndroid Market for TVがオープンとなる。Googleによれば、2011年夏までにGoogle TV関連ソフトウェアのオープンソース化を実現する予定だという