JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、金星探査機「あかつき」らを搭載したH-IIA 17号機の5月18日午前6時44分14秒に予定していた打ち上げを延期した。

発射場のある種子島宇宙センターの同時刻の天候は小雨模様。ギリギリの状態で、打ち上げカウントダウン中も飛行機を飛ばし雲の状況の確認が行われていた。

打ち上げを待つ状態のH-IIA 17号機。中継のカメラにも雨による水滴がついていた

打ち上げ中止のアナウンスは、発射までのカウントダウンが400…350…と来たところで突然、アナウンスされた。その瞬間、パブリックビューイングを開催していたJAXA相模原キャンパスに集まっていた約60名の観客からは驚きの声が上がった。驚きの声は観客だけでなく、相模原の運用管制室に詰めていたスタッフも同じ状況だったようで、打ち上げ中止のアナウンスが流れた瞬間は、一瞬、時が止まったかのような、不思議な状況に陥ったという。

打ち上げ中止のアナウンスが流れたのは発射6分前の6時38分。中止会見にて説明を行った三菱重工業のMILSET長である並河達夫氏によると、「射場周辺に規定以上の氷結層を含む雲が確認されたため」(並河氏)であり、発射における雷に係る制約条件の1つに記載される「氷結層を含み、鉛直の厚さが1.8km以上の雲」に当該したための中止となる。

もし、氷結層を含む雲を通っての打ち上げとなると、ロケットが雷を誘発し、搭載している各種機器などがその影響により動作不具合などを発生させる危険性があった。

打ち上げ天候制約としての氷結層を含む雲についての説明図(出所:JAXA Webサイト)

再打ち上げは、燃料を一旦抜く作業などもあるため、中2日は開ける必用があり最短でも21日となる。H-IIA 17号機は、金星との距離を計算した上で打ち上げられるため、一般的な打ち上げに用意されている天候の回復を待つなどの時間的な余裕がまったくなく、その指定された時間のみ打ち上げが許されるということとなっており、結果として、打ち上げ時間にかかった雲が流れるのを待つことができなかった形となった。

ただし、JAXAのスタッフなどは意気消沈しておらず、「打ち上げに失敗したわけではなく、単なる延期。今回は、打ち上げのための最良のシミュレーションができたと思っている」と打ち上げの成功に向け前向きな姿勢を見せており、打ち上げの成功に向けたさらなる取り組みを進めるとしている。

5月18日15時追記:なお、再打ち上げの時期についてJAXAは、同日14時過ぎに5月21日の午前6時58分22秒(日本標準時)に決定したことを発表した。