米News Corp.会長兼CEOのルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏が傘下のFox Business Channelのインタビューに答え、Googleらインターネット企業と既存メディア(Old Media)との関係に言及し、すべてオールドメディアはコンテンツ提供先としてすべてiPadを選ぶことになると自身の見解を述べている。その理由とは何なのだろうか?

同インタビューの内容はYouTubeに掲載されている。冒頭でマードック氏は「Googleは検索を無料でユーザーに提供し、その上で金儲けのための(ずる)賢いビジネスモデルを築いている。彼ら自身は何も生のコンテンツを持たずに、われわれの情報をかっさらっていくだけだ。そして必ず『我々は貴方のサイトのユニークユーザー増加に貢献しています』という。だが冗談ではない、それでは我々が良質だと考えているコンテンツを維持するだけのコストに見合わない。確かに優秀な技術を持っているのかもしれないが、もし我々が「その行為を止めろ」と主張したときに、それに抗うための権利は持っていない。こうしたGoogleのビジネスに参加するつもりはない」とコメントし、従来のGoogle対抗の主張を崩していない。

また一方で、こうしたGoogleとの対決姿勢は「オールドメディア対ニューメディア」というくくりではなく、自身のNews Corp.グループ自体はすでにニューメディアに属していると主張する。その根拠として挙げるのが参加の20th Century Foxが発表した3D映画「Avatar」だ。映画業界の概念を塗り替えた作品であり、自らが革新者の側にいるというのだ。そしてオールドメディアと呼ばれる企業らの今後の動向については、iPadへと集まってくるという見解を述べている。その理由とは、"表現力"にあるという。

例えば、音楽、本、新聞などはすべてiPadで再生できるメディアであり、さらに映画などのコンテンツも包含できる。インタラクティブ性もあり、例えばニュースでオバマ大統領の画像をクリックすれば動画で演説が始まるなど、より表現の幅が広がる。広告でも同様のものが実現されれば、より視聴者の本能に訴えることができるというのがマードック氏の主張だ。こうした仕組みは静的コンテンツを前提としたKindleのディスプレイでは表現できず、ゆえにiPadなのだという。

またiPadというキーワードを出しているが、その実はiPadを含むタブレット型デバイス全般を指してトレンドを予見しているようだ。今後、SamsungやLGといったベンダーがすぐに参入し、さらに数カ月内にもHewlett-Packard (HP)が追いかけてくるだろうと述べている。すべてのメディアを包含できるデバイスの出現により、すべてのオールドメディアが参入可能になるというのだ。

電子ブック端末として注目を集めるiPadだが、実際にはより多くのメディアにとって新しいチャンスを秘めているといえるのかもしれない。特に新聞や出版、TV、映画まで、あらゆる種類のメディアを傘下に持つメディアコンゴロマリットのNews Corp.にとってみれば、単なる電子ブックリーダー以上の価値を見出せるのだろう。