米国のAssociation of Certified Fraud Examiners(公認不正検査士協会)の調査によると、2008年に米国全土で発覚した組織内における詐欺/横領事件による被害額はおよそ1兆ドル(約90兆円)にも達するという。さらに、一般企業においては、その平均額は27万8,000ドル(約2,508万円)にも及んでいるとのことだ。

このような実態に企業はどう対処するべきなのか。American Expressが運営するビジネスサイト「OPEN Forum」が、刑事学者のDonald Cressey氏の解説による行動分析と対応策を掲載している。

まずは従業員が詐欺や横領を働くきっかけとなる3つの要因を分析する。

1. プレッシャーまたは動機

支払いに追われていたり、薬物やギャンブル癖。仕事で生産性の向上が求められている場合。

2. 機会

誰にも気づかれずに詐欺が働ける機会や立場にある場合。

3. 合理化

横領者自身が「詐欺的な行為が正当であると信じることができる論理と考え方」をもっている場合。

これらをふまえた上で、社員による横領を防ぐための3つのtipsを紹介している。

その1 潜在的なリスクや脅威、脆弱性といった潜在的な詐欺のコストを認識する

詐欺のリスクというのは複数の要因が絡んで生じるもの。直接的であれ間接的であれ、会社の指揮や顧客維持、評判に財務的な影響を与えるような要因をよく理解し、それらにどう対応すべきかを考えておく。

その2 従業員を知る

水面下での信用調査は、詐欺行為を防ぐ上で最もよい方法である。ただし、これを雇用プロセスにおける基準にしてはならない。信用調査を行う上では、まずは調査の範囲を定義し、一貫性と公平性のある基準をもとに調査結果を説明できるような効果的な意思決定のプロセスを採用する、などの細心の注意をが必要である。そしてとくにインサイダーに対しては、定期的なアップデートや裏での財務の裏調査をときどき行うこと。

その3 企業の最優先事項をリーダーシップ、価値、認識に設定する

セキュリティに対する積極的な姿勢を会社全体に醸成する。不審な行動や出来事に対して、従業員が報告するよう奨励し、権限を与える。また、従業員に目を向け、彼らが仕事にどのような感情を抱いているかに注意を払うこと。行動やふるまいの変化は、潜在的な問題に対する先行指標のキーのひとつとなるので注意しておく。