京都大学は3月5日、同大の物質-細胞統合システム拠点内に設置したiPS細胞研究センターを改組、2010年4月1日付けで「iPS細胞研究所」を設立することを決定した。これにより、京都大学の附置研究所は14になり、初代研究所長には山中伸弥教授(現物質-細胞統合システム拠点iPS細胞研究センター長/再生医科学研究所教授)が就任する予定。

2007年11月に山中教授の研究グループがヒトiPS細胞の樹立成功を発表したことを受け、京都大学は2008年1月22日に、日本のiPS細胞研究を推進する中核組織として、iPS細胞研究センターを物質-細胞統合システム拠点内に設立していた。

同大では同センター設立後、iPS細胞の創薬応用のさらなる拡大や再生医療応用の推進には、中長期的な研究戦略に基づき、基礎研究から前臨床研究、臨床研究へシームレスに推進していく必要があると判断。2009年12月にiPS細胞研究所(仮称)設置準備委員会を立ち上げ、設置の理念や関係諸規程、教員選考等について審議を重ね、2010年3月1日に、京都大学役員会においてiPS細胞研究所設置にかかる関係規程が承認され、「iPS細胞研究所(Center for iPS Cell Research and Application:CiRA。略称の読み方はサイラ)」の設立が正式に決定されたという。

iPS細胞研究所研究棟

これにより、教員枠の充実を図ることが可能となり、安定的な研究所運営が可能となるほか、研究を推進するために、現在のiPS細胞研究センターにおける前臨床研究、臨床研究を中心に再編し、新研究所設立時の主任研究者数を17名とする計画。

設立される研究部門は「初期化機構研究部門」「増殖分化機構研究部門」「臨床応用研究部門」「規制科学部門」の4つで、iPS細胞の基礎研究については、今までどおり物質-細胞統合システム拠点で主として遂行され、両部局の連携の下で運営されることとなる。また、教育については、医学研究科の修士および博士課程の学生を受け入れることで、引き続き大学院教育に協力する体制を構築するほか、これら研究部門を支援する組織として、研究戦略本部ならびに事務部が設置される。

新研究所は、運営費交付金、競争的資金、また寄附金によって、運営される予定。2010度は、教職員・研究員・技術員などを合わせて約120名規模となり、年間約20億円以上の予算が想定されている。また、研究が進展するとともに規模を拡大し、2012年度には約200名の構成員となる見込みとしている。