AppleのApp Storeに登録された無料のある電子ブックリーダーアプリが、ある日突然USB経由でのPC同期機能を削除したことが話題になっている。しかもそれがAppleの要請だったという点がさまざまな憶測を呼んでいる。

同件について詳しく報じているのは米TechCrunchで、「Apple Demands Removal Of USB Sharing Feature In Stanza iPhone App」という記事によれば、「Stanza」というEPUB形式の電子ブックを読むことが可能な無料アプリが突然バージョンアップし、そのアップデート内容として「Removed the ability to share books via USB.」(USB経由での書籍共有機能を削除)とだけ記されていたという。本来であれば、バージョンアップで機能削除のみというのは奇妙な話だが、App Storeでは同マーケットプレイスを管理しているAppleがさまざまな変更や削除をアプリ制作者側に要求するケースがあり、必ずしも珍しいことではない。

ちなみにこのStanzaだが、開発元であるLexcycleは昨年2009年に米Amazon.comによって買収されている。TechCrunchはLexcycleにUSB同期機能削除の理由について質問したところ、同社はAppleからの要請だったことを認め、それ以上については答えなかったという。しかもその直後にStanzaの説明文の内容がアップデートされ、「Removed the ability to share books via USB as required by Apple.」という文章に書き換わっている。クレームが多かったことに対して、事実上説明を付与した形だ。

削除理由についてはさまざまな憶測がなされているが、米Los Angeles Timesは、iPhone Explorerの作者からのコメントを引用して、StanzaがiPhoneの開発者に要求しているApp Developer Agreementに違反した可能性を指摘している。

アプリがiPhone内のフォルダにアクセスする場合、自身のアプリに用意されたSandboxと、写真などの共有ファイルにアクセスするためのDCIMフォルダの2種類が用意されている。だがSandbox内では複数アプリ間でデータを共有することはできないため、DCIM内にサブフォルダを作ってそこを介してデータ通信を行う方法が用いられるという。だがこれはグレーゾーンとして認識されており、Appleの前述の規約で禁止している。もし判明した場合は、Appleの要請に応じてDCIMへのアクセス機能を削除し、一切の同社へのクレームを禁止するというものだ。Stanzaが説明できなかった理由はここにある可能性が高いという。

技術的ガイドラインに違反した可能性がある一方で、Amazon.comの子会社という、電子ブック市場でのライバル関係にある企業への嫌がらせという声も依然としてあり、しばらくはStanzaをめぐって議論が続きそうだ。