SMAPの稲垣吾郎が主演する舞台『象』の制作発表が26日、東京・初台の新国立劇場で行われ、稲垣のほか、共演者で出産後初の女優復帰作となる奥菜恵らが出席した。

舞台『象』に出演する奥菜恵

同作は別役実の初期代表作で、1962年の初演から48年の時を経て復活。原爆で背中にケロイドを負った病人とその甥の苦悩を軸に、被爆者の陥った閉塞状況や人間社会全体の抱える存在の不安を描く。

約2年ぶりに舞台に立つ稲垣は「自分にとって、全ての芸事の源は舞台で、生のお芝居ができるのは大きな意味のあること。難しく非常にハードルの高い作品ですが、素敵な舞台にしたい」と意気込み、「脚本を読み終えた後、今までにない感覚になった。子供の頃に感じたちょっとした孤独とか未来への希望が思い出されて、僕と結びつきの深い作品になるのかもしれない」と思いを語った。

1998年につかこうへいの舞台『広島に原爆を落とす日』にも出演経験のある稲垣。「10年以上経って、今回また広島と原爆をテーマにした舞台に出られることに縁を感じるし、いまいましい戦争を人間は起こしてはいけないと伝える義務を課されたんだと思う」と、自身の役割に深くうなずいた。

また、現在、ミュージカル「TALK LIKE SINGING」に出演中のSMAPのメンバー・香取慎吾について尋ねられると、「ニューヨーク公演で観させていただいたんですが、(香取が)ぴったりと役にはまっていて、『象』とは全く違う世界観ですごく素敵な作品。東京公演も観に行きたいですし、この舞台もメンバーに観に来てもらいたい」と、メンバーの話題になると真剣な表情から笑顔に変わり、照れ臭さを隠せない様子だった。

"病人"を演じる大杉漣は「今に通じる人間の姿がちゃんと描かれた作品なので出演を決めました。病人にも関わらずセリフが一番多い役で、病人なのになんでこんなに元気なんだろうって思います(笑)」

別役氏は「約50年前の古い本ですが、新しく蘇らせたいと思った。ケロイド1号の方の活動は現代でも記憶して然るべきだと思うし、喪失感のある現代人に理解される心情だと思う」

一方、昨年9月に第一子となる女児を出産し、本作が女優復帰作となる奥菜は、広島出身で小さい頃から被爆者の話を聞く機会が多かったと振り返り、「被爆者の女性は、結婚や子供を生むことに対して大変苦しむと聞いた。わたしが演じる看護婦も、原爆で子供を失ってしまったのか、原爆の後遺症で子供を生むことが困難なのか、(役の)設定はまだ模索中ですが、戦後何十年経っても心に残る苦しみや悲しみの葛藤を、少しでも深く自分の中で理解をしてこの作品と向き合えたら」と、子供を持つ母親として神妙な面持ちで語っていた。

舞台『象』は、3月5日(金)~3月30日(火)の期間で、東京・新国立劇場にて公演。1月30日(土)10:00~より前売り開始。