米国時間で12月25日昼に発生した米デルタ航空のNW253便でのテロ未遂事件では、厳重な警戒を突破して発火物によるテロ行為が再び行われようとしたことに衝撃を受けるとともに、同日以降の全フライトと空港で警戒レベルが最大まで引き上げられ、年末年始を控えた旅行客の移動に大混乱をもたらしている。今回はビジネストラベルTIPSとして、事件の簡単なあらましと、現状のセキュリティ体制、旅行者が注意すべき事項を紹介しておく。
12月25日昼(米国時間)、オランダのアムステルダムを出発して米ミシガン州デトロイトに向かっていた米デルタ航空のNW253便の機内で爆発物を発火させようとした男が拘束された。男はナイジェリア国籍のUmar Farouk Abdulmutallabという人物で、国際テロ組織として知られるアルカイダとの関連を示唆している。爆発自体は周囲の乗客らに阻止され、機内が煙で包まれるというトラブルこそあったものの、デトロイト空港に着陸して全乗客の生命は無事だった。さらに2日後の27日、やはり今度もまったく同じ便のNW253で同機に乗っていた別のナイジェリア国籍の男も2人目の容疑者として拘束されている。詳細は不明だが機内トイレで不審な行動をとったことが理由という。本稿執筆時点ですでに6時間が経過しているが、いまだ航空機はターミナルから隔離されており、乗客全員が機内で拘束状態にあるという。以上の経緯を踏まえ、現在事件の概要について解明が進められている。
今回の事件は再びテロ行為が起こったという点もさることながら、911テロ事件以降に強化されたセキュリティ体制を突破してテロ容疑者が爆発物を機内に持ち込めた点で衝撃を与えている。さらにセキュリティ強化後の航空便で、しかもまったく同じ便での2人目の逮捕者出現が、セキュリティ体制の効果に疑問を呈す形となった。犯人がナイジェリアから飛行機を乗り継いだアムステルダムのスキポール空港は、蘭KLM航空とデルタ航空(旧ノースウェスト航空)の主要ハブとして知られ、国際線乗り継ぎが容易な空港として人気が高い。だがそれがセキュリティ上の問題になることもあり、スキポール空港の中でも米国行きの便だけは特殊なセキュリティ体制が敷かれており、搭乗ゲート前で二重のチェックを受けなければならない。これを突破されたことが1つの問題になっている。
事件以降、緊急措置として空港のセキュリティレベルが最大限に引き上げられている。空港セキュリティを統括する米運輸保安局(Transportation Security Administration: TSA)では5段階のセキュリティレベルを設定しており、色分けが行われている。911事件以降はほぼ2番目のレベルであるオレンジの状態が続いていたが、NW253事件以降の現在は最高位のレッドになっている。米国内のすべての空港、米国に向かうすべての航空便を対象に全乗客の綿密なボディチェックと荷物の開封検査が行われており、以前に比べてゲートの通過にかかる時間が大幅に増えているほか、フライト遅延が状態化している。TSAでは航空機の遅延に備えた旅行プランを立てるようアナウンスしている。
日本では成田空港や関西空港などの米国行きの便ですでに数時間単位の遅延が発生しているほか、全乗客に対する搭乗ゲートでの再ボディチェックが実施されている。さらに厳しいのは米国内の空港で、空港ゲートでの詳細ボディチェックのほか、持ち込み荷物をいったんすべて広げてからのX線スキャンなど、個々人のチェック時間が大幅に増えているようだ。AFP通信などのレポートによれば、数時間単位での遅延は常態化しており、乗り継ぎ便に間に合わない乗客が続出しているほか、かつてない長さの検査待ち行列が出来ているという。米国内で国内便を乗り継ぐ予定の旅行者は特に注意したほうがいいだろう。
今回の事件を受けて旅行客に混乱が広がるなか、報道機関各社も旅行者向けのアドバイスを多数紹介している。たとえば米New York TimesはQ&A形式でのアドバイスコーナーを用意している。ここでは、スムーズに旅行を進めるためのコツを簡単にまとめておく。
米国内便では出発1時間半 - 2時間前が到着時間の目安だったが、これでは厳しい可能性がある。出発2 - 3時間前を最低ラインと考えて、可能な限り余裕のあるスケジュールを。乗り継ぎ便の待ち時間に空港外に出て市内観光を考えている旅行客もいるかもしれないが、安全のためにしばらくの期間は外出は控えたほうがいいだろう。
今回の事件では持ち込み荷物に爆発物があったため、機内持ち込みが特に厳しく検査される傾向があるようだ。最近の米国内便では荷物の預け入れが有料化されたため、機内に手荷物としてスーツケースやキャリーバッグを持ち込む乗客が多い。報道などによれば、持ち込みの荷物はすべていちどカバンから取り出され、詳細検査を受けることになるという。荷物が多ければ多いほど検査に手間がかかり、拘束時間も長くなる。対策としては、必要ない荷物はできるだけ預け入れを行い、服装も含めてシンプルにしたほうがいいだろう。
ゲートでの検査をできる限り素早く抜けるには、持ち込み荷物の基本ルールを守るのが近道だ。バッグは持ち込み用と小型の手提げのもので1つずつ。液体類は特に厳しく、100mlを上限として、透明のビニール袋(ZIPロックなど)にすべてまとめておき、X線検査の際にはバッグから取り出して別のトレーに載せてスキャンさせる必要がある。液体の空瓶の持ち込みも可能だが、上記のビニール袋に一緒にまとめておく必要がある。詳細についてはTSAのチェックリストのほか、3-1-1ルールの説明を参照のこと。また医薬品なども別途検査されることがあるため、常備薬を持っている人は処方箋(できれば英語表記のもの)を携帯しておいたほうがいいだろう。パスポートと航空券は移動中つねに携帯していること。
セキュリティ強化のため、すべての米国行き便は到着1時間前から乗客の着席義務が通達されている(参考: エアカナダ航空のお知らせ)。事件での1人目の逮捕者が不審な行動をとっていたこと、2人目の逮捕者がトイレで拘束されたことなどを受けてのもので、着陸1時間前からは座席上の荷物入れをいじったり、トイレに行くことができなくなる。フライト時間が1 - 2時間程度の便では席を移動することができないため、トイレは空港で済ませておく、あるいは長距離フライトでも早めに行動を済ませておく必要がありそうだ。
これだけ急激に検査態勢が強化されれば、当然ながらフライトに間に合わないケースが多発する。フライトの遅延が常態化しているため、乗り継ぎフライトに間に合わなくても焦らないほうがいい。乗り継ぎ便自体が遅延している可能性があるほか、遅れた乗客向けのアナウンス対応も行っている。困ったときはカウンターに相談しよう。カウンターにも行列ができているはずなので順番は守ること。航空会社も事態は理解しているから、決して怒鳴るといった行為で一方的に攻撃しないように。
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