米IBMのdeveloperWorksが1999年9月の設立から今年で10年周年を迎える。developerWorksはオープンソースの業界標準やIBM製ツールを対象にした開発者向けリソース集で、全世界に800万人以上の利用者を抱えている。このdeveloperWorksが「10 important Linux developments everyone should know about」と題し、過去10年を振り返ってLinux周辺で行われた10の重要な出来事やプロジェクトをまとめた。

1. Linux Professional Institute Certification

Linux Professional Institute Certification (LPIC)はエンジニアのLinux技術スキルを図るための認定試験制度。LPIの日本事務局であるLPI-Japanによれば、2009年11月末の時点で日本の累計受験者数は23万人を突破したという。LPIは2000年に最初の試験である「test 1a」の提供を開始し、現在では7種類のテストと3つの認定レベルを用意している。

2. Samba

Andrew Tridgell氏が開発したLinux向けのSambaは、developerWorksが稼働する5-6年前からすでに利用が進んでいた。今日、多くの企業でWebサーバやファイアウォール、電子メールなど、さまざまな用途でLinuxが浸透している。だが一方で、なぜWindows環境でのファイルサーバやプリンタサーバとして利用されないのか。それを考えたとき、SambaのLinuxソフトウェアとしての親和性が生きてくる。

3. Linux on S/390

2000年初頭にメインフレームのS/390向けLinuxが登場したとき、「1つの箱に1つのOS」というアイデアはLinuxにはすでに当てはまらないものになった。S/390を利用することで、一度に多数の仮想Linuxインスタンスを1つのハードウェア上で走らせることができる。また開発者のLinuxスキルのメインフレーム環境への応用が可能になった。

4. SELinux

SELinux (Security Enhanced Linux)は、米国家安全保障局(NSA)によって2001年初頭にGPLとして公開された。カーネル2.6.0への統合以降、SELinuxはアクセスコントロールの各種ポリシーモデルのサポートを提供している。

5. Linux LiveCDs

LiveCDは、HDDへのインストールなしに起動するLinuxシステムのブートCDで、すべての動作がメモリ上で完結している。多くのLinuxディストリビューションがLiveCD版を用意しており、デモ用途以外に、システム診断やリカバリーといった特定作業向けのLiveCDも存在する。こうした実用的な目的以外にも、単純にWindowsユーザーへのLinuxのアピールなどにも活用されることがある。

6. Linux clusters

Linux草創期のユーザーは、複数のマシンをつなぎ合わせて可用性を高めたり、より高いパフォーマンスを引き出そうと試みていた。Beowulfはその初期の成果の1つで、複数マシンによる並列コンピューティングにおける重要なアーキテクチャとなった。ロードバランシング用のクラスターとしては、ClusterKnoppixのLiveCDがある。

7. Linux supercomputing

互いに密に連携したマルチコアシステムは、当然ながらネットワーク化されたマシンのパフォーマンスを大きく向上させることができる。Blue Gene/LやBlue Gene/PといったマシンではLinuxが動作しており、特定用途向けの科学技術計算環境で処理能力記録を打ち立てている。こうした"最高速"のコンピュータが存在する一方で、これら技術はわれわれ多くが利用する一般的なビジネスコンピューティング環境へとフィードバックされていくことになる。

8. Linux on PlayStation

ソニーが自社のゲーム機にLinuxのインストールを許可したことで、Cell/B.E.に興味を持つプログラマが、その利用オプションの1つとしてPS3を選択することが可能になった。

9. Virtualization

バーチャライゼーション(仮想化)では、1つまたは複数のゲストOSを別のシステム上で動作させることができる。Linuxカーネル2.6.20では、初めてKernel Virtual Machine (KVM)を搭載した。だが、これは決してXen、User-Mode Linux、QEMU、VMwareといった他の仮想化技術が劣っているということではなく、すべてが等しく重要だ。開発者にとって仮想化の意味は、クラウド環境での利用だけでなく、テスト用の安全なサンドボックスとして利用できる点にある。

10. One Laptop Per Child

One Laptop Per Child (OLPC)プロジェクトは2005年に発表され、世界中の恵まれない子供に低価格で長持ちのネットワーク対応コンピュータを提供することを目的にしている。ここで採用されたのは"Sugar"と呼ばれるLinuxベースのOSで、既存のツールや伝統的なLinuxインタフェースから離れ、代わりに目的ベースの特別なUIをラッピングさせることで、煩雑な手順から離れて作業や表現の部分に特化できるよう工夫されている。