カシオ科学振興財団は、有意義な研究42件に対して総額5200万円の助成金贈呈を決定、12月4日にカシオ計算機の本社にて贈呈式を開催した。

カシオ科学振興財団は、日本における学術研究の発展と振興に貢献するため、1982年に設立された財団だ。「特に萌芽的な段階にある先駆的かつ独創的研究を助成すること」を主眼に、自然科学分野および人文科学分野の研究に対して1983年より毎年助成活動を行っている。

カシオ科学振興財団 理事長 樫尾幸雄氏

贈呈式にあたり、カシオ計算機 副社長であり、カシオ科学振興財団の理事長である樫尾幸雄氏は、「カシオ計算機を創業したカシオ4兄弟の長男である樫尾忠雄は、 研究開発費で苦労した。そのため、同じように研究開発で苦労されている研究者のみなさんのお役にたちたいという強い思いがあり、財団を設立した。どうか、助成金を研究者の方の夢に使い、力強く研究にまい進いただき、我が国の発展に貢献されるよう願っています」と挨拶した。

27回目となる今年度は申請が過去最高の216件あり、選考の結果、42件の研究に助成することを決定した。 なお、今年で研究助成は累計1,014件となり、財団設立27年目にして1,000件に達した。

研究者を代表して研究助成贈呈状を受け取る、東京農工大学大学院 共生科学技術研究院准教授 白樫淳一氏

文部科学省 研究振興局長 磯田文雄氏の祝辞を代読する、文部科学省 研究振興局学術研究助成課 学術団体専門官 笹川光氏

来賓として招かれた文部科学省 研究振興局長 磯田文雄氏は、「カシオ科学振興財団はこれまで1000件、12億円を超える助成を行っており、平成18年度からは社会の要請に応じた特別テーマを設定し、特色ある助成を実施しており、今後の研究成果をおおいに期待したい」と祝辞を寄せた。

そして、研究者を代表して、東京大学 生産技術研究所特任助教 守谷頼氏、京都大学大学院 人間・環境学研究科准教授 神崎素樹氏、山形大学大学院 理工学研究科准教授 松尾徳朗氏の3名が、助成に対する感謝の弁を述べた。

東京大学 生産技術研究所特任助教 守谷頼氏

守谷氏はSSDに代わる高速の不揮発性メモリの研究を行っている。これにより消費電力の低減になり、地球規模での低消費電力化に向けた大きな貢献となるという。そして同氏は、記憶装置であるHDDが高速な不揮発メモリに代わっていけば、パソコンやサーバの性能が上がり、HDDやメモリの市場をカバーする大きな産業や雇用の創出につながると語った。

神崎氏は、高齢者の筋力の力調整能力向上を研究している。

京都大学大学院 人間・環境学研究科准教授 神崎素樹氏

力調整能力の低下は高齢者の転倒などを誘発するそうだが、これまでは筋力トレーニングや運動トレーニングを推奨していたという。しかし、トレーニングは逆に転倒や骨折などの怪我につながる可能性があるため、神崎氏は、これらは根本的な解決策になっていないと指摘。同氏が研究するノイズ刺激による力調整能力向上は、高齢者や外的・内的疾患を有した患者には、安全で効果的な方法だとした。

松尾氏の研究は、学生の興味・嗜好を講義の履修や就職活動に役立てようという研究だ。

山形大学大学院 理工学研究科准教授 松尾徳朗氏

例えば、これまでどんな教科を履修してきたのか、図書館ではどんな本を借りたのか、生協でどんなものを購入し、学食で何を食べてたのかといった学生の興味や嗜好の情報をコンピュータに入力、分析することにより、その学生に向いている教科を履修させたり、適している職業を提案し、選択を躊躇している学生を支援していくという。また、実証実験や追跡調査などを通して改善も実施するという。

助成対象となった研究者(一部代理も含む)

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