産業能率大学は12月2日、役員を含む営業職の管理職(営業マネジャー)を対象に実施した営業現場での教育に関する調査結果を発表した。同調査は、自部署の目標達成見込み、教育投資、営業活動に求められる能力、不況に強い営業管理職の特徴などについてまとめている。

今年度の自部署の目標達成見込みについては、72%が「マイナス」と回答しており、目標達成は厳しい状況にあるようだ。しかし、3年後の見通しについては、組織全体では53%が、自部署でも51%がトントンあるいはプラスになると回答しており、景気が底を打ったという見方もあるなかで好転を想定しているようだ。

営業目標の達成状況 資料:産業能率大学

営業目標の達成状況(詳細) 資料:産業能率大学

営業部門全体の教育投資額は平均127.5万円だった。部門全体の教育投資額は当然ながら営業部門が抱える人数の影響も受けるが、37%が年間0円と回答している。また、営業部門の1人当たりの教育投資額は平均3.8万円だった。平均額は、従業員規模500人以下では4.1万円、同501人以上では3.2万円で、製造業よりも非製造業のほうがやや多いという結果が出ている。

教育予算が「1年前より減った」という回答は32%、「来年以降は減る見込み」という回答は27%だった一方、「1年前より増えた」、「来年以降増える見込み」という積極派は8%だった。また、「どちらでもない」とともに、厳しい不況下でも教育投資を削らない層が6割以上だった。この結果について、同大学ではバブル崩壊後の教育予算削減の反省もあるのかもしれないと分析している。

教育投資額の状況 資料:産業能率大学

同調査では、営業に必要な能力・スキルについて、「重要なもの」、「部下に不足しているもの」、「部下に身についているもの」を聞いている。

営業活動で重要なものは、1位が商談に直接関係する「説得・交渉力」(41%)で、これに営業活動において基本となる「行動力」(37.0%)、提案に際して必要になる「企画立案能力」(31%)、「発想・想像力」(30%)が続いている。5位は「外見(身だしなみ)」(27%)。

部下に不足しているものが最も多かったのは、重要なものの4位に当たる「発想・想像力」(33%)だった。これに、「説得・交渉力」(27%)、「ストレス対処力」「商談のテクニック」(いずれも26%)、「プレゼンテーション能力」(25%)が続いている。

身についているものは、「外見(身だしなみ)」が40%で最多だった。これに、「営業トーク・会話力」(29%)、「行動力」(28%)、「情報の整理・分析力」(27%)、「ヒアリング能力」(24%)が続いている。

また、目標達成見込みのの調査とクロス集計を行い、不況に強い営業マネジャーの特徴として、営業方針・営業体制、教育・指導、研修内容について分析が行われた。

まず、売上より利益を重視するという営業方針で、属人的ではなく組織的な営業体制を採用している場合、目標達成の見込み率が高いという分析が示されている。

教育方針については、目標達成の見込みが「トントン・プラス」の層は、「OJTで指導した」という回答率が高く、顧客の情報や社内人脈、指導計画に関することなどで差が目立つという。また、トントン・プラスの層は、「育成の目標が明確になっていない」、「Off-JTや自己啓発支援が足りない」という回答がマイナスの層よりも顕著に低く、組織全体として人材育成の環境を整えているように見受けられる。

受講している研修については、階層別研修、職場運営や部下指導・育成の研修といったマネジメントの研修を受けている層はトントン・プラスの層が高いという結果が出ている。同大学では、マネジャーに対するマネジメントに関する研修に積極的な教育投資をしてきた企業では、部下指導や育成、職場運営を実践できる営業マネジャーが育ち、不況に強い営業職場になっているのかもしれないと分析している。