携帯音楽プレイヤーやスマートフォン製品の好調な売上に支えられ、いまや世界最大のNANDフラッシュメモリ買い付けメーカーとなった米Appleだが、この同社の行動に対して韓国メーカーを中心に業界で不満が日増しに高まっているという。それは購入量を武器に、メモリチップの価格を自分に都合のいいように操作していることに起因するようだ。

こうしたメーカー側の不満は韓国のKorea Timesがレポートしている。フラッシュメモリ市場では業界1位と3位のメーカーとなる、Samsung ElectronicsとHynix Semiconductorを抱える韓国だが、前述の購買シェアを武器に、Appleは日増しに価格決定力を強めているという。その秘密は単純に大量発注を行うだけでなく、メーカーを競合状態に陥らせることで価格を引き下げる手法にあるようだ。例えば、特定のメーカーから大量入手するのではなく、さまざまなメーカーに少しずつ発注をかけることで価格を競争させている。またKorea Timesによれば、メーカーに本来購入するよりも多くの量の生産を持ちかける一方で、実際には少量しか購入せず、チップのだぶつきから価格が下落したタイミングを狙って再度購入を打診するといった方法を採ることもあるという。

ある業界関係者は匿名を条件に「Appleは世界のNANDフラッシュ市場の需要と供給サイクルを悪化させている罪で咎められるべきだ」と同紙に対してコメントしている。また前述の購入タイミングについても、Apple内部で想定しているNANDフラッシュメモリ価格に落ちるまで様子見をしているようだ。価格を操作できるだけの購入量を誇る同社ならではの戦略かもしれない。

需要の高まりに比例してフラッシュメモリの価格が上昇しないことに苛立ちを感じていることがうかがえるレポートだが、一方でAppleが最大の顧客であることには代わりなく、今後も購入量を増やしてほしいというジレンマに陥っているようだ。また価格操作の問題についても、競争をダシにメーカーらがAppleに手玉にとられていることが原因とみられ、Appleの価格交渉力の高さに感心するとともに、韓国メーカーがどのように主導権を取り戻すかがポイントとなりそうだ。