2001年9月11日に発生した航空機ハイジャックによる米同時多発テロ──多数の死者を出し、世界を戦争と混乱に導くきっかけとなった事件だが、崩壊した世界貿易センタービル(WTC)では新しいビルの建設が開始され、事件も風化しつつあるように見える。だが8年後の2009年11月25日、米国のある市民団体が事件発生前後の24時間にわたってポケベルを通してやり取りされた約57万通にわたるメッセージをインターネットで公開し、話題になっている。その多くは国防総省やFBI、消防署、WTC内に設置されたコンピュータの警告メッセージなど政府関連の当事者のものがほとんどで、当時の生々しい状況を伝えている。

9.11の舞台裏が公開された

今回情報を公開したのはNPOのWikileaks.orgで、当時ポケベル(Pager)を通してやり取りされた通信のログをまとめている。通信は2001年9月11日午前3時(米東海岸時間)に始まり、翌12日午前2時59分59秒で終了している。事件の発生時刻はおおよそ11日午前7時ごろから昼過ぎにかけてで、平穏な朝から混乱、その後の経過に至るまでがつぶさに記録されている。通信内容がポケベルのメッセージという点も、まだ携帯メールが普及してない当時の様子がしのばれて興味深い。また前述のように、メッセージの多くは軍や警察組織などの間でやり取りされたもので、WTCへの飛行機追突状況や被害情報を通知するもの、至急の避難を伝えるものなど、内容がリアルタイムで伝わって非常に生々しい。一方で誤認のハイジャック情報や未知のテロリストに対する警告が発令されているなど、現場が大きな混乱に見舞われている様子も散見される。

Wikileaks.orgでは911特設サイトを設置しており、11月25日午前3時から翌26日午前3時までにわたって、記録されたテキストメッセージのログをリアルタイムで中継するサービスを提供しており、当時の様子を思い起こしてほしいと結んでいる。なお、公開されたテキスト全文は911特設サイトの中にZIP形式でアップロードされている。

911同時多発テロから1年後、WTC周囲の壁には亡くなった人や行方不明だった人々に宛てた写真を添えたメッセージの走り書きやが多数見受けられた

復旧しつつあるWTC跡の通称「グランドゼロ」。跡地には「フリーダムタワー」と呼ばれる新しいビルと記念碑が設置される予定だが、金融危機に端を発する資金不足から建設計画に困難が生じている。写真は今年9月撮影