Microchip Technologyは11月18日、USB On-The-Go(OTG)に対応した16ビットPIC24Fマイクロコントローラ(マイコン)および32ビットPIC32マイコンを発表した。

16ビットPIC24Fマイコンとして新たに発表されたのは「PIC24FJ64GB004」および「PIC24FJ64GA」の2ファミリ。一方の32ビットPIC32マイコンとして新たに発表されたのは「PIC32MX5/6/7」の3ファミリとなっている。

「PIC24FJ64GB004」および「PIC24FJ64GA」の2ファミリのイメージ

「PIC32MX5/6/7」ファミリのイメージ

icrochipのVice President,Advanced Microcontroller Architecture Division(AMAD)であるMitch Obolsky氏

これらのファミリについて、MicrochipのVice President,Advanced Microcontroller Architecture Division(AMAD)であるMitch Obolsky氏は、「16ビットファミリは低消費電力に注力し、32ビットはさらなるハイパフォーマンスの実現を目指した製品」とし、「32ビットマイコンはエキサイティングではあるが、すでに機能として似たようなものが存在している日本市場ではあまり他社のマイコンとの差異がないかもしれないが、一方の16ビットマイコンは相当に差別化要因が大きいと考えている」とその製品の概要を説明する。

16ビット2ファミリは、同社の低消費電力技術「nanoWatt XLPテクノロジ」を採用することで、フラッシュメモリを64KBまで拡張しつつも、従来の小容量のフラッシュメモリを搭載した16ビットマイコンと同程度の待機時消費電力を実現しているという。具体的にはディープスリープ時で最小20nA、ウォッチドッグタイマが最小400nA、リアルタイムクロック/カレンダが最小500nAとなっている。「これにより最長20年間のバッテリ寿命が実現できるようになるほか、時間や日付の正確性を向上させ信頼性や堅牢性の向上が可能になった」と同氏は語る。

「PIC24FJ64GA104」汎用ファミリの概要

「PIC24FJ64GB004」USBファミリの概要

また、静電容量タッチセンシング「mTouch」も実装しており、同社では同製品の適用領域として、民生のほか、携帯機器、工業製品、車載機器、医療機器などを想定しているという。こうした分野において、同マイコンではホスト/クライアントの切り替えが可能なため、例えば携帯型mp3プレーヤのドッキングステーションがUSBを経由してプレーヤとデータのやり取りを行う場合はホストとして振舞う必要がある一方で、USBのサムドライブはクライアントとして、さまざまなホスト機器と接続する必要があるが、1チップでこういった役割を実現することが可能になるという。

さらに、電力のスマートメータ同様、水道メータやガスメータもスマート化が検討されており、そうした分野でのバッテリ寿命の長寿命化なども同ファミリで実現可能となるとしている。

なお、USB機能を活用したいが、複雑な設計は面倒だというカスタマに対しては、同社が提供するUSBフレームワーク構成ツールを活用することで、数クリックでプリンタホストやデータロガー、OTG、HIDなどの機能を搭載させることが可能となっている。

Microchipが提供するUSBフレームワーク構成ツール

一方の32ビットマイコンに関しては、「主に通信プロトコルの対応種類を増やしたのが特長」(同)と説明する。具体的にはMX5がCAN 2.0bに対応、MX6が10/100Mbps Ethernetに対応、MX7がCAN 2.0b×2、10/100Mbps Ethernet対応となっており、いずれもUSBホスト/デバイス/OTGおよびUART×6、I2C×5、SPI×4などに対応している。

PIC32MX5/6/7それぞれの概要

既存の32ビットマイコンおよびPIC24ファミリとピン互換を達成しており、USB OTGには2チャネルの、CAN 2.0bには4チャネルの、10/100Mbps Ethernet MACには2チャネルのDMAがそれぞれ割り振られており、これにより「CPUコアに対して負荷をかけずにこうした通信処理を行うことが可能となる」(同)とする。CPUコアには従来32ビット同様MIPS TechnologyのCPUコア「MIPS32 M4K」(動作周波数80MHz)を採用しており、「10/100Mbps Ethernetをフルで活用しても、CPUの動作周波数80MHzのうち、5MHzのみ使用するだけで動かすことが可能だ」(同)と説明する。

PIC32MX5/6/7のブロック図

同マイコンにはMIPSのM4Kコアが活用されていると前述しているが、同社のコアの考え方として同氏は、「コアがハイパフォーマンスであることはもちろん求められることだが、それ以上に一貫したサポートの提供などの方がMicrochipとは重要だと考えている」としており、「我々の強みは、品質、信頼性、サービス、サポートと言った面もあるだろうが、何よりも注文を受けてからカスタマに渡すまでに4~5週間しかかからないその速さにある」と自社の強みを分析する。そのため、「もし、新しいコアを採用しようという話になったとしても、それは将来的な話であり、しかも、従来のUSBプロトコルスタックなどや既存の開発ツールなどが問題なく動くかを検証し、さらにカスタマに負担が被らないようにした上でなければならない」との見方を示す。

第3者によるベンチマークで高い性能を出すが、性能以外にも要なものが多くあるとする

こうした考え方から、同社では同マイコンをハイパフォーマンスが実現可能といううたい方ではなく、グラフィックスが入りながらもモータ制御といったこともでき、しかも通信もできる、という多機能が1チップに統合されていることを特長としてカスタマに提供していければ、とする。

多機能をサポートするための各種ライブラリや一部のツールを無償で提供しているほか、サードパーティ製のソフトウェアも選択することが可能

注力する市場としては、CANといっても自動車分野ではなく、産業機器分野を狙っているとしており、日本でもそうした産業分野に対し、「16ビットも同様で、こちらは低消費電力を武器にグリーン化を図れるものとして提案し、32ビットでは複雑なアプリケーションに対応できることを武器に、どうやってイーサネットを活用していくかなどの提案も行い、カスタマのビジネスの強化を手伝っていくつもり」とした。