三洋電機は11月13日、大容量・高電圧のリチウムイオン電池システムとして蓄電用標準電池「DCB-101」および動力用標準電池システム「EVB-101」を開発、製品化したことを発表した。いずれも2010年3月からの量産を予定しており、それぞれ月産500台から生産を開始する。なお、価格は個別対応としているが、サンプル価格としてはDCB-101が40~50万程度、EVB-101が15~20万程度になると同社では予想している。

蓄電用標準電池「DCB-101」(左)と動力用標準電池システム「EVB-101」(右)

三洋電機 モバイルエナジーカンパニー ビジネス開発統括部の雨堤徹氏

2製品の開発に関して、同社モバイルエナジーカンパニー ビジネス開発統括部の雨堤徹氏は、「低炭素社会の実現に向けた循環型社会への加速、自然エネルギーの有効活用などが求められており、当社としても、高い充放電効率でエネルギーの無駄が少ない2次電池として、携帯電話やノートPCといった市場で実績のある小型電池を活用することで、大容量・高電圧システムを開発し、これまでにない分野での活用を狙った」と語る。

同社では5年ほど前からノートPCや携帯電話といった分野以外の新規分野の開発を進めてきており、今回の製品もその一環となっている。

三洋電機の電池事業の変遷

製品として使用しているリチウムイオン電池はノートPCで主流の18650サイズ(直径18mm×高さ65mm)を選択。同社の円筒形18650サイズは、高容量向け品「UR18650ZT(Min.2700mAh)」、マルチユース向け品「UR18650Y(Min.1900mAh)」、高容量・高出力品「UR18650E(Min.2050mAh)」、バックアップ向け品「UR18650U(Min.1100mAh)」、高出力品「UR18650W(Min.1500mAh)」「UR18650A(Min.1200mAh)」「UR18650AX(Min.1250mAh)」と幅広くラインナップされているが、今回はDCB-101にはマルチユースタイプのUR18650Vが、EVB-101には高容量・高出力タイプのUR18650Eがそれぞれ採用されている。

円筒形18650サイズのラインナップと鉛電池との性能比較

今回は2種類の電池が選択されたが、「カスタマから相談してもらえれば、用途に応じて他の製品などを用いることも可能」(雨堤氏)とする。

製品の概要は、DCB-101の方が電池構成を13直列24並列とし、平均48V(39~52V)の出力電圧、電池容量33.6Ah、充電電圧52V(Max)、電力量1613Whで、最大出力約1.5kW、最大放流電流30Aを実現している。外形は19インチラックにそのまま搭載することが可能となっており、 フロントに電極と通信用LANインタフェースが2つ備えられている。

「DCB-101」の概要

一方のEVB-101は、電池構成を14直列6並列とし、平均50.4V(42.0~57.4V)の出力電圧、電池容量10.8Ah、電力量544Whで、最大出力5.2kW(ピーク)/1.5kW(連続)、最大放電電流120A(ピーク)/35A(連続)を実現している。こちらは「電動補助自転車などの動力用として出力を高くしているのが特長」(同)とする。

「EVB-101」の概要

これらシステムを用途に応じ直並列接続することで、さらなる大容量化、高電力化も可能とするほか、独自のバッテリマネジメントシステムを内蔵したことにより、「電池を自己診断し、必要最低限の状態情報を容易に通信で知らせることが可能となっている」(同)としている。また、EVB-101には風雨に対応可能なように、アルミの外装ケースを採用、JIS IPX6の防水性能を実現しているという。

こうしたシステムの活用として、同社ではすでにソーラー駐輪場における太陽電池との連携やソーラーLEDサインシステム、無停電信号機などでの稼働試験を実施中としているほか、動力用途として日本EV(電気自動車)クラブ主宰のカートレースに2006年から参戦しているほか、横浜ゴムと連携し北米のパイクピークスヒルクライムに2009年7月に参加、走行距離20km(標高2,850m→4,300m)を14分50秒で走破、EVとして歴代2位の記録を達成、「この成果から2010年からはEVクラスが新たに新設されることとなった」(同)ということもあり、今後もイベントに参加する計画とする。

蓄電用電池システムのアプリケーション例

このほか、日本EVクラブ向けコンバートフォーミュラーカー用に2008年からリチウムイオンバッテリシステムを搭載し、各サーキットでの走行などを行ってきたほか、2009年11月17日には同クラブと協力して午前3時に東京日本橋を出発、同日の午後3~4時を目標に大阪の日本橋まで無充電で走行する「東京~大阪途中無充電ミラEVの旅 そんなに走ってどうするの」を計画している。

動力用電池システムの活用としてEVへ搭載、レースなどで実証を行ってきた

なお、三洋電機では、こうした18650系のリチウムイオン電池を活用した大容量・高電圧電池システムに加え、大型セルを活用した電池システムなども製品化する計画で、「2015年度には同事業で約800億円の売り上げを目指す」(同)とする。

「DCB-101」のデモの様子(右側の黒いのがDCB-101、青いボックス状のものによりDCをACに変換し、家庭用コンセントからエネループ バイクの専用リチウムイオンバッテリ充電器へ電力を供給していた)