ブラザー工業は、同社が長年開発してきた網膜操作ディスプレイ(RID:Retinal Imaging Display)の電源ボックスの小型化に成功、モバイル化を実現した試作機を開発したことを明らかにした。

今回開発された携帯可能なRID試作機とメガネに取り付けた様子

RIDは、目に入れても安全な明るさの光を網膜に当て、その光を高速で動かすことによる残像効果を利用した映像投影技術。網膜に投影された映像は「視覚」として認識され、あたかも目の前の何もない空間に映像が存在しているかのように感じることができる。

同試作機は、光源モジュール、光走査モジュール、接眼モジュールの3つのモジュールで構成されており、光源モジュールでは、フルカラー画像を表示するため光の3原色(赤・緑・青)のレーザ光源が必要だが、これまで緑色の半導体レーザーが実用化されていなかったため、従来機では緑色固体レーザを採用していた。そのため、光源モジュール部分の小型化が課題となっていたが、緑色半導体レーザを採用したことで、光源モジュールの小型化に成功。光源モジュールを含む電源ボックスを従来試作機に比べて体積を1/20、重量を1/13まで小型化かつ軽量化することに成功した。

RIDを構成するモジュール群

同社のメガネ型RIDは、透過型ディスプレイを採用したことで、視野を妨げることなく画面を見ることができるのが特長。また、ディスプレイを通して見える画面サイズは、1m先で16型相当と、十分な大きさを実現している。このため、ディスプレイを置けない場所や両手を使っての作業が必要な場合においても、マニュアルなどを表示、確認しながら作業を行うことが可能である。

いわゆる拡張現実(AR:Augmented Reality)を体験できるわけだが、今回の試作機では持ち運びが可能なように、従来のAC駆動から、電池での駆動を実現しており、モバイル環境下での使用が可能となった。

RIDを装着した際の視覚イメージ

なお、同社ではRIDの2010年度の事業化を目指しているとしている。