一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)は13日、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダへの「私的録音録画補償金」の課金に関し、権利者とメーカーらによる議論の結論が出るまで保留すべきだとする要望書を、文化庁長官らに9日に提出したと発表した。

私的録音録画補償金制度は、私的使用を目的とした個人または家庭内での著作物の複製について、一定の割合で録音録画機器のメーカーから補償金を徴収し、著作権権利者への利益還元を図ることを目的とした制度となっている。だが、iPodなどの携帯音楽プレイヤーやHDDレコーダ、PCといった現行の補償金制度外の機器についても対象に含めるよう求める権利者側と、著作権保護技術の進歩を理由に同制度の縮小を求めるメーカー側の主張は大きく乖離(かいり)している。

この中で、HDDレコーダについては、そのほとんどが、課金対象のDVDレコーダの機能も備えた「ハイブリッドレコーダ」のため、補償金の課金対象となっている。また、Blu-ray Discレコーダの場合も、課金対象のDVDレコーダの機能を備えていることがほとんどで、その多くが課金対象となっている。

だが、デジタル放送のみを受信できるDVDレコーダに関しては、メーカー側から「著作権保護のためのコピーコントロール(ダビング10)がなされているデジタル放送のみを受信するDVDレコーダに関しては、補償金の対象外とすべき」という趣旨の主張がなされている。

文化庁ではこれに関し、2009年9月8日、社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)からの照会に回答する形で、「アナログチューナー非搭載のDVD録画機器が、著作権法第30条第2項に規定される私的録音録画補償金制度の対象機器に該当する」との文書を文化庁長官官房 著作権課長名で出した。

MIAUではこの文書に対し、「文化庁は、関係者間で合意の取れていない『アナログチューナー非搭載のDVD録画機器が対象機器に含まれるか』という判断を、何の審議も経ず独断で行った」と批判。10月9日、文化庁長官、文部科学大臣、消費者担当大臣、消費者庁長官、消費者委員会委員長宛てに、「アナログチューナー非搭載DVD録画機器を私的録音録画補償金の対象機器に含む件についての意見と要望」と題する要望書を提出した。

要望書では、「私的録音録画補償金制度は、メーカーに協力義務を課しているだけであり、法的制裁もなく、メーカーが協力をしなければ実効性を持たない脆(もろ)い制度。言い換えれば、関係者間の話し合いに基づく合意がなければ成立しない制度」と指摘。「権利者とメーカーの対立構図が深まっている中、行政官庁である文化庁がこのような見解を出せば、メーカー側が態度を硬化させ、補償金制度に一切協力しないという行動につながりかねない」と文化庁の対応を非難している。

その上で、以下の点を要望している。

  1. 無料デジタル放送の録画に対する私的録音録画補償金制度のあり方については、消費者、権利者、メーカーなどを含む、公平な人選のもと、透明性の確保された審議の場を設け、そこで引き続き合意をめざして議論すべきであり、早急にそのような議論の場が設定されること

  2. アナログチューナー非搭載DVD録画機器を補償金制度に関して政令指定機器であるとした文化庁長官官房 著作権課長の回答を撤回し、議論の結論が出るまで本件は保留とすること

この問題に関しては、MIAUの指摘通り、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダへの補償金課金を行っていないメーカーも出てきており、文化庁側の対応が注目される。