T-Mobile USAが米国で販売する多機能携帯電話「Sidekick」用のサービスからユーザーデータが消える事故が発生した。Sidekickでは、コンタクト、カレンダー、To Do、写真などのユーザーデータをクラウドにバックアップする仕組みになっており、サーバの障害がデータ消失の原因だという。データを復旧できる可能性は極めて低く、Sidekickをリセットしたユーザーはデータを完全に失ってしまう。

Sidekickは、Microsoft傘下のDANGERが開発・提供している多機能携帯電話で、サービス管理も同社が行っている。先週Sidekickユーザーからサービスが不安定であるという報告が相次ぎ、T-Mobileが原因を調査していたが、ついに予定やコンタクトが消える騒動に発展してしまった。米国時間の10月10日、T-MobileはDANGERのサーバ障害が原因であると発表。さらに「(消失した)情報をリカバーする方法を見いだそうと努力しているが、成功する可能性は極めて低い」と付け加えた。12日時点では、ユーザーの端末に残されたデータから再度バックアップをするのが唯一の解決策という状態。そのためT-Mobileは、Sidekickをリセットせず、バッテリを外したり、バッテリが空にならないように注意しながら、サービスの復旧を待つように指示している。だが、Sidekickで問題が起こった場合、リセットまたはバッテリを外して再起動する解決方法がユーザーに浸透しており、すでに多くのSidekickユーザーがデータを完全に失ったと見られている。

T-Mobileは今も対応を協議中で、今後は専用ページを通じて情報アップデートを提供する。まずはSidekickユーザーに対する1カ月のデータサービスの無料提供を決定した。

MicrosoftがWindows Mobile端末向けに「My Phone」を開始、家電量販チェーンのBEST BUYが「mIQ」を発表するなど、スマートフォン/多機能携帯電話向けのオンライン・データバックアップ・サービスの提供が増え始めている。パソコンを必要とせず、簡単に新しい端末へと移行できる手軽さ、データを失わない安心感などがアピールされているが、今回のSidekickのようなトラブルが発生しては、そうした新サービスの魅力が薄れてしまう。また、これまでGoogleのGmailなどがサービス障害を起こす度にクラウドサービスに対する不安が指摘されてきたが、大手サービスのデータ消失という前例が加わったことで、クラウドサービスはより厳しい議論に巻き込まれるだろう。今後ユーザーからの信頼を得るには、データのバックアップとリカバリ、サービスをアップデートする際のトラブル対策などを明確に示す必要が出てきそうだ。