産業技術総合研究所(産総研)の知能システム研究部門サービスロボティクス研究グループは、上肢に障害のある人向けの小型軽量ロボットアーム「RAOUD(Robotic Arm for Persons with Upper-limb Disabilities)」を開発したことを明らかにした。

左がテーブルに取り付けられたRAPUD、右が電動車いすに取り付けられたRAPUD

これは、上肢に障害のある人が自分自身で操作する生活支援用小型軽量ロボットアームの実用化に向け、産業化が可能な水準の価格設定を目指し、安価な部品の開発と、既存技術の統合によるシステム開発を目指したもの。

RAPUDは、肘回転関節の代わりにブロック連続体を用いた直動伸縮機構を採用、服や物などがジョイント部分に挟み込まれるリスクを減らすとともに、外装に鋭角部分が無い適切な形状を採用したほか、関節の動きを測るセンサの2重化などの採用により安全性を確保している。また、直動伸縮機構を樹脂ブロックの結合により構成することで小型化と軽量化を実現した。アームとハンドは合わせて7自由度を持ち、高さ約75cm、全長40~100cm、可搬重量0.5kg、全体重量約6kgであり、ユーザの使用状況に合わせて、ワンタッチで取り付け、取り外しが可能だ。

安全・信頼性の面では、センサの2重化のほか、安全認証取得済み通信モジュールの採用、分散型制御モジュール、安全リレーモジュールの開発などにより従来以上の安全性を確保することに成功している。

動作の制御には、組み込み機器用CPUを採用し、LAN、USB、シリアルポート、デジタル入出力など各種の入出力インタフェースを実装し、名刺サイズのロボット用小型省電力高性能CPUボードを開発。これにより、小型軽量のままで、駆動が可能となったほか、小型ジョイスティック、オートスキャン型入力パネルとシングルスイッチ、汎用キーパッドなどでの操作以外にユーザの要望に合わせてカスタマイズ可能な操作インタフェースを開発、搭載している。

現在、同アームは、下志津病院と日本医療科学大学の木之瀬隆教授の紹介による筋ジストロフィーや頸椎損傷を負った人たち上肢に障害のある人たちの協力により、操作評価実験が進められており、実用化に向けた改良が進められている。

産総研では今後の計画として、実際のユーザとのコミュニケーションを通じて、信頼性と使いやすさの向上を目指し、製品の実用化を進めていくとしているほか、RAPUDを1つの部品として、移動ベース、カメラ、マイクなどのモジュールと組み合わせることで、テーブル上や床に落ちたものの拾い上げ、スイッチ操作といった個別の要求に対応可能なシステムへの展開も目指すとしている。

なお、運用面での技術開発も行っていくほか、知的財産権の多くを産総研技術移転ベンチャーであるライフロボティクスに移転し、販売実現を目指すとしている。