米航空宇宙局(NASA)は9月24日(米国時間)、月と火星のそれぞれの表面に水が存在すると発表した。

月面においては、NASAの「Moon Mineralogy Mapper(M3)」が極地方で微量の水分子を発見、同時に土中のヒドロキシル基(構造式が-OHで表される、1個の水素原子と1個の酸素原子で構成される化合物)も発見している。M3はインドが初めて宇宙に向けて発射した月周回探査機「チャンドラヤーン1号(Chandrayaan-1)」に搭載されている、月面の鉱物をマッピングする装置。今回発見された水分子およびヒドロキシル基は、太陽があたる面の、緯度が高い地域ほど多く分布していた。

M3が撮影した、地球からは見えない面にあるクレーター付近の赤外線画像。2つの画像は同じ地点を撮影している。左は波長の短い赤外線で撮られた月の表面。右の青く表示されている部分に水分子およびヒドロキシル基が存在していると見られる

実はすでにNASAは月に水が存在することを以前から確信していた。NASAが打ち上げた土星探査機「カッシーニ(Cassini)」は、地球にフライバイした1999年、水分子およびヒドロキシル基が月面に存在することを裏付けるデータを送信していたのだが、今回のM3による発見が明らかになるまで、その事実は公表されなかった。カッシーニの研究チームによれば、当時のデータと今回のデータは、ほぼ一致しているという。

もっともNASAの研究者たちは「月に水が存在するといっても、それはもちろん、海や湖が存在するという類のものではない」としており、「土中の濃度は1,000ppmくらい、月の全表面に存在する水を計量しても、せいぜい32オンス(約907g)程度」だという。

一方、火星についてはこれまでの調査で、大昔に大量の水が存在したことは証明されているが、現世代に存在することが明らかになったのは初めて。発見したのは、NASAの火星周回探査機「Mars Reconnaissance Orbiter(MRO)」で、赤道より北側の中緯度付近、5カ所に点在していた氷の状態の水を見つけた。比較的若いクレーターのそば、深さ0.5m - 2mの土中に、存在していたという。ものによってはかなり「大きく、明るい状態」ではっきりと確認できる。MROチームのスタッフはこの氷について、「わずか数千年前、火星はもっと湿気を含んだ天体だったことを示す"遺跡"のようなもの」と述べている。

火星で発見された氷のひとつ。2008年10月の画像(左)では、比較的浅い部分に埋まっているため、氷の頂が明るく輝いて見える。3カ月後の画像(右)では、ただの黒い点に変わっているが、これはおそらく水分が大気中に蒸発したためとみられる

NASAは今回の2つの大発見を受けて、さらに調査を進めていく予定だ。