理化学研究所と東海ゴム工業(TRI)が2007年に設立した理研-東海ゴム人間共存ロボット連携センター(RTC)は、介護支援ロボット「RIBA(Robot for Interactive Body Assistance:リーバ)」を開発したことを発表した。

RIBAは、高さ約140cm、重さ約180kg(バッテリ含む)で、全身を発泡ウレタンなどの柔軟素材で覆っている。片腕7、頭3(ただし現在は1のみ使用)、腰2の自由度を持ち、台車はオムニホイールで移動

RIBAは、人間タイプの両腕を持っており、人をベッドや車椅子から抱き上げ、移動し、抱き下ろす一連の移乗作業を行うことができる、介護負担の軽減を目指したロボット。同ロボットが実用化されれば、介護士の移乗に伴う肉体的な負担(腰痛など)の軽減が可能になることとなる。

理研では、2006年に人の抱き上げを目指したロボット「RI-MAN」を開発していたが、同ロボットは実際に抱き上げることができたのは、あらかじめ決められた位置に座っている18.5kgの人形が限度であった。RTCは、このRI-MANの成果を継承し、理研の制御・センサ・情報処理技術とTRIの材料・構造設計技術を融合することで、RI-MANをすべての面を見直し、実際の人間を扱うことができる安全性、パワー、操作性を確保した介護支援ロボットの開発を目指したという。

構造材には、金属のほか、将来の軽量化ならびに生産性を目的に前腕には高強度樹脂を採用した。これにより、前腕は、従来機と同等の強度ながら重量を1/2に軽減することに成功した。また、間接を含め、全身を柔軟素材で覆うことで安全性の向上も実現している。

また、構造解析を行うことで、必要部分の強化を重点実施、重量180kg(バッテリ含む)ながら、61kgの人間の抱き上げが可能となっている。さらに、RI-MANでも採用しているた干渉駆動機構を改良、より高重量への対応が可能な高剛性干渉駆動方式を開発、搭載した。移動機構は、介護施設や病室のような狭い空間の移動も可能なように、全方向に移動可能な車輪(オムニホイール)を採用している。

このほか、RI-MANでも用いられていたロボット内のネットワークによる分散情報処理をさらに改良。各所に埋め込んだ小型情報処理ボードを高速化することで、より高度な処理が可能となった。例えば、RI-MANでは1枚の触覚シート(64素子)の処理に15ms程度かかっていたものが、RIBAは1msで終了することが可能となった。

RIBA内に埋め込まれている小型情報処理ボード(20枚以上埋め込まれており、内部ネットワークを構成している)

加えて、腕の全周を覆うように触覚センサを配置。これにより、抱き上げ時にどのような角度でも抱き上げられた人が触覚センサと接触するようになるとともに、それ以外の部位を、操作者がロボットの操作に用いることができるようになった。また、視聴覚の能力も向上、操作者の音声と顔を認識することで、操作者に顔を向けながら操作者方向に移動することができるようになった。

腕の全周を覆う触覚センサ(抱き上げた人の荷重分布の検出ができるとともに、操作者の意図を検出する)

デザインは、人間に近づけると不気味さが、メカ的なデザインは介護現場とのミスマッチとしてマのぬいぐるみのような親しみやすさを念頭においたものを採用した。また、構造や材料、制御方法などを工夫することで、RIBA前面から1m(高さ1m)の位置での抱き上げ時の作動音を53.4dB(A)とした。

人を抱き上げた様子

なお、RTCはRIBAを発展させた介護支援ロボットの研究を進めるとしており、移乗だけでなく、人間とロボットの間で力のやり取りが生じるリハビリテーションなどへの応用についても検討を進めているとしている。より大きな重量も安全に扱えるとともに、より多様な環境に対応できるように研究を進めることで、技術の進歩に合わせてロボットの自律性を高めることで、さらに使いやすいロボットを目指すとするほか、メンテナンス性や生産性を高め、数年以内に介護施設でのモニタ使用を実施し課題を整理後、TRIによる商品化を目指すとしている。