Analog Devices(ADI)は、欧州原子核研究機構(CERN)が2009年秋に再稼働する粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」に、ADIのデータコンバータが10万個以上採用されたことを発表した。

LHCは、スイスのジュネーブ郊外にある地下100mm、外周27kmのトンネル内に設置されている粒子加速器。同内部では、原子より小さな「ハドロン」と呼ばれる、プロトン(陽子)や鉛イオンから成り立つ2つの素粒子ビームが、円形加速器内で反対方向に周回し、一周ごとにエネルギーを高め、高エネルギー状態の2個の素粒子ビームを正面衝突させることが行われる。研究チームは、この衝突時に生成される粒子を、検出器を通して解析を行う。

LHC内の様子

今回採用が決まったのは、ADIの12ビットA/Dコンバータ(ADC)「AD9042」で、加速器によって生じる衝突により放射されるエネルギーをデジタル・ストリーム情報に変換する役割を担う。これにより、エネルギーを計測し、解析できるようになる。同ADCは、6万4,000本のタングステン結晶リードのうち1本が捉えたエネルギーを計測するのに必要となる、速度とダイナミック・レンジを備えており、これらの結晶によりフォトン(光子)、電子、ならびにポジトロン(陽電子)のエネルギーを計測することができるという。

なお、CERNは、1954年に設立された素粒子物理学に関する研究機関で、本部はジュネーブながら、欧州の合弁機関であり、現在、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、および英国の20カ国がメンバーになっているほか、インド、イスラエル、日本、ロシア、米国、トルコ、ECおよびUNESCOがオブザーバとなっている。