シトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)は、米シトリックスのバイスプレジデントで、XenプロジェクトのリーダーでもあるIan Pratt氏の来日に合わせ、次期バージョンのXen ServerであるXen Server5.5などを紹介するプレス説明会を開催した。

米シトリックス バイスプレジデント Ian Pratt氏

Ian Pratt氏は冒頭「2月にXen Serverの無償化を行ったが、このアクションは成功し、Xen Serverの勢いが高まった。この無償化製品を30日以上使う場合には、アクティベーションが必要だが、その数は予想超えた数値になっており、仮想化市場でのシェアを伸ばしている。現在は、VMwareに後塵を拝しているが、Xen ServerはVMwareにとって代わることができる非常にセキュアなソリューションだ。使い勝手がよく、既存の環境に適合できる面が優れている。現在はVMwareが持っていて、Xen Serverが搭載していない機能も存在するが、2009年の年末までにはそのギャップを埋めることができる見込みだ」と述べた。

また、「我々は、すべてのコンピュータで工場出荷時にあらかじめ仮想化が組み込まれている状況を期待しているが、それはデスクットップやノートPCだけでなく、携帯電話にも広がると考えている」と述べ、来年にも携帯電話における仮想化製品をリリースする予定であることを明らかにした。

シトリックスでは、来週、米国で新バージョンのXen Server5.5を発表する予定だが、この際、管理者の管理を容易にするための有料製品「Citrix Essentials for XenServer」の新版も発表される。なお、日本語版は7月末に提供される予定。この製品は、無償化されたXen Serverに対し機能拡張を行うもので、シトリックスではこの製品で収益を確保したいという狙いがある。

またこの製品には、提携関係にあるマイクロソフトのHyper-V向けの「Citrix Essentials for Hyper-V」もあるが、日本での提供は未定だ。

「Citrix Essentials for XenServer,Hyper-V」のおもな機能

Ctrix Essentialsでは、「Workload Blalancing」「Workload Life Cycle Management」「StorageLink」などの機能が提供される。

「Workload Balancing」では、すべてのバーチャルマシンのパフォーマンスをログとして記録、分析することができる。これにより、パフォーマンスの最適化をサポートする。

「Workload Blalancing」

「Workload Life Cycle Management」は、開発系、本番系のアプリケーションのライフサイクルを管理するもので、Lab ManagementとStage Managementからなる。

開発環境用のLab Managementでは、開発中のアプケーションがさまざまな仮想化環境で動作することを想定し、メモリ量などそのアプリの動作に合わせ仮想マシン上に環境を構築する。これによって、開発者やテスト担当者は、本番に近い環境でテストすることができる。この環境は、ユーザーが一定期間アクセスしない場合は、自動的に消去されるという設定にすることも可能だという。

そして、テスト済みのアプリを本番環境に移行したいときに利用するのが、Stage Managementだ。Stage Managementでは、本番系を開発系に逆に移動することもできる。たとえば、新しいパッチを当てた環境をテストしたい場合、一度開発系で確認したのち、本番系に移動するといった運用も可能になる。

「Workload Life Cycle Management」

「StorageLink」は、ストレージ自体が持っているスナップショップやクローンなどの機能をXen Server上から管理するための機能だ。Ian Pratt氏は、「これらをソフトウェアで提供するよりも、ハードウェアの機能を使うことでパフォーマンスを向上でき、サーバの仮想化とストレージの仮想化を統合して管理することができる」と述べた。

「StorageLink」

Ctrix EssentialsにはEnterpriseとPlatinumの2つのEditionがある

ベアメタル向けのXenClient

説明会では、今年の後半にも登場する予定の、工場出荷時にPCのハードウェアにHypervisorが直接インストールされた状態で出荷されるベアメタル向けのXenClientも紹介された。これは、モバイルユーザー向けのもので、よりコンプライアンスの順守が求められる企業内向けのデスクトップ環境と、外出先や自宅など、プライベートな環境での利用を想定したデスクトップ環境を同じPC内に持ち、それぞれを切り替えながら利用するというものだ。

従来のOS上でHypervisorが動作するType2と、ハードウェアでHypervisorが動作するType1がある

2つの環境は画面上部で切り替える

企業内向けのデスクトップ環境では、ユーザーはソフトのインストールは行えず、プライベート環境からウィルスやスパムの攻撃を受けないという。また、暗号化も行われ、環境をサーバにバックアップすることもできる。

そのほか、外部の仮想化環境でアプリを起動することができ、この場合キーロガーによるキー操作の取得や画面キャプチャなどもできなくなるという

外部の仮想化環境を利用の場合、画面が緑の線で囲まれる

外部の仮想化環境を利用の場合、VistaのWindowsフリップでもプレビューされない