東北大学サイバーサイエンスセンター、大阪大学サイバーメディアセンター、情報・システム研究機構 国立情報学研究所、NECは6月2日、遠隔にある2つのベクトル型スーパーコンピュータを1つのシステムとして仮想化してプログラムを実行し、世界最大級のベクトル型スーパーコンピューティング環境が実現できることを実証した。

東北大学では、NEC製SX-9 16ノード(最大ベクトル理論性能 26.2TFLOPS)、大阪大学では同じくSX-9 10ノード(同 16.4TFLOPS)を導入しており、2つのスパコンは学術情報ネットワーク(SINET3)で高速接続されている。

今回、2台のスパコンを連携させるにあたり、国立情報学研究所が開発したミドルウェア「NAREGI」が用いられている。同ソフトは、点在する研究開発拠点の大規模な計算リソースを高速ネットワークで連携させ、仮想的に1つの巨大なコンピュータと見なすことで、個別コンピュータシステムだけでは困難な大規模並列シミュレーションなどを、効率よく実行することを可能にする。

今回の実証実験では、共有メモリ・分散メモリ用の並列プログラミングライブラリを用いて、連携させた東北大学と大阪大学のSX-9上で並列化された電磁界分布シミュレーション用のプログラムを実行させた。これにより、2台のスパコン間で計算資源の仮想化と処理負荷状況の自動的な判断によってジョブの最適な振分け実行が可能であることが実証された。

今後は、ベクトル型スーパーコンピュータを保有するより多くの組織と連携することで、実行効率の向上やコスト低減を可能にする学術情報基盤「ベクトル計算クラウド」の実現を目指す。

従来のスパコンの利用環境(左)、仮想化されたベクトルコンピューティングクラウド環境の(右)の違い