NECエレクトロニクスは6月1日、低電力Cu配線に対し、Cu配線の表面を極薄コバルト(Co)合金膜で選択的に被覆して安定化させるメタルキャップに対応する新しい配線構造を開発いたことを発表した。また、同技術を用いることで、従来課題であった多孔質low-k膜の絶縁信頼性を劣化させることなく、Cu配線の信頼性を従来技術比10倍程度に向上させた高信頼・低電力Cu配線の実現を確認したという。

プロセスの微細化に伴い、絶縁膜材料としてlow-kから多孔質のlow-kへと技術開発が進んでおり、膜間に配置されるCu配線についても高信頼性を確保するため、Cu表面の安定化が求められていた。一般的には、Coなどを溶解させた化学溶液にウェハを浸し、無電界めっきすることで極薄Co合金をCu表面に成長させるという方法が検討されているが、多孔質であるため、液中のCoなどの金属が膜にしみこみ、絶縁信頼性を劣化させてしまうという問題があった。

同社では、半導体MIRAIプロジェクトと共同で開発した多孔質膜「Molecular-pore-stack(MPS)膜」を用いることで、Coの浸み込みを抑制、Cu配線の表面のみをCo合金で選択的に覆うメタルキャップ構造を実現。これにより、多孔質low-k膜の絶縁信頼性と配線信頼性を両立させた高信頼・低電力Cu配線を実現したという。

同社では、同技術を用いることで、車載半導体で求められる150℃以上の高温使用環境下においても、配線信頼性を確保した微細配線の実現可能性が実証されたとしており、今後、28nmプロセス以降の先端LSIへの適用に向け、早期の実用化を目指して研究活動を進めていくとしている。