富士通は4月30日、2008年度の通期の連結決算を発表した。それによると売上高は、前期比12%減の4兆6929億円、純利益は1123億円の赤字となった。一方営業利益は687億円の黒字となり、2月に公表した500億円に対し187億円上回り、上方修正した。これは、全社挙げてのコストダウンや効率化によるもので、代表取締役社長 野副州旦氏は「これが富士通の強さ」と評した。

富士通の2008年度連結決算概要

金額 前期比
売上高 4兆6,929億円 -12%
営業利益 687億円 -66.5%
経常利益 150億円 -90.8%
特別損益 -1,283億円 -
純利益 -1,123億円 -

純利益は1123億円赤字となったが、これは1283億円の特別損益を計上したため。内訳は、富士通マイクロエレクトロニクス(FML)の三重工場300mm第2棟の建屋及び製造設備を減損したことにより499億円、HDD事業譲渡関連で370億円、LSI事業の製造体制再編(基盤ライン)で113億円、光伝送システム事業や電子部品事業など収益性の低下した事業に係る固定資産についての減損損失で89億円などとなっている。

売上高は前期比で12%の減収だが、為替の影響除くと6%だという。主な原因としては、デジタル家電向けや自動車関連向けを中心に幅広い分野でロジックLSIが減収になったため、デバイスソリューション分野で前期比26%マイナスとなる2000億円以上の減収になったほか、パソコンの価格競争激化や携帯電話の買替えサイクルの長期化による影響を受け、ユビキタスプロダクトソリューション分野で前期比20%マイナスの約2400億円の減収になってことが挙げられる。

その一方でソリューション/SI、インフラサービスを中心とするテクノロジーソリューションについては、経済状況が悪い中、営業利益は1887億円と前期比86億円増となっているほか、営業利益率も前期の5.5%から6.1%に好転している。これについて野副社長は「これまでやって来た改革の成果が現れつつある」と評した。

富士通 代表取締役社長 野副州旦氏

野副社長は、「課題はハードディスクと半導体」と語ったが、ハードディスク事業については、東芝に譲渡することがすでに決まっており、4月30日に最終契約の締結を行っている。一方の半導体については、2009年度の最大の課題に掲げ、これまで行ってきた構造改革を粛々と行うほか、台湾のTSMCとの生産委託契約のような外部委託をさらに推し進めるという。

2009年度の業績見通しについて野副氏は「厳しさは継続し、回復は2010年度以降」と語り、2009年度も市場の回復は見込めないという厳しい見通しを語ったが、「2年続けて赤字を出すことはできない」と述べ、売上高、前期比2.3%増の4兆8000億円、純利益200億円の業績予測を発表した。野副氏は「強いところをさらに強くする」と語り、テクノロジーソリューション分野の改革を中心に進めていく方針を示した。具体的には、これまで地域軸とソリューション軸の2つで行ってきたものを、業種軸に1本化するよう営業体制の見直しを図っていくという。また、グループ会社の統合も進め、地域ブロック体制を推し進めていくという。

ワールドワイドでは、富士通テクノロジー・ソリューションズの体質強化を図り、富士通との連携を深め、2010年度にワールドワイドで50万台のIAサーバを販売する体制を整えていく予定だという。

このようなグローバル化の推進に対しては、SAP、オラクル、シスコなどから新たな協業の申し出も来ており、現在検討中だという。

先日オラクルに買収されたSunと共同開発しているSPARCサーバ事業について野副氏は、「日本にはSolarisの市場はかなりある。これをお客様視点に立って守り続けていくことは、富士通の命題だ。この市場は、IAサーバで吸収できるものではない。富士通としては、この市場を守り続けていきたいとの覚悟は強い」と述べた。