三洋電機と東京工業大学(東工大)資源化学研究所は、導電性高分子膜の高導電率化技術を開発、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と呼ばれる高分子(ポリマー)材料において、1,200 S/cm以上の導電率を実現可能な製法を開発したことを発表した。

PEDETの分子構造

導電性高分子は、"電気を通すプラスチック"とも呼ばれる物質で、コンデンサや帯電防止膜など幅広い分野で用いられている。今回の成果は、さらなる用途の拡大および性能向上に向けたもの。

同高分子の製法には「化学重合」や「電解重合」などの方法があり、その合成法も複数存在している。中でも1ステップで完了する「化学酸化重合法」は簡単かつ安価にできる方法として知られていたが、反応の制御性が不十分で、高い導電率を示す高分子材料の合成は難しかった。

一方、PEDETは安定な分子構造を持ち、導電性や耐熱性において高いポテンシャルを有することから、導電性高分子材料の中でも多くの研究が行われてきたが、導電率は作り方によって大きく変わり、一般的な製法では数100 S/cmが上限であった。

今回、PEDETを化学酸化重合時に加える添加剤を新規開発したことで、1,200 S/cm(最高1,490 S/cm)以上の高い導電率を再現良く得ることのできる製法を見出した。

添加剤による導電率向上

この成果は、導電性高分子材料の応用範囲を電子材料に拡げることができる可能性を示したもので、例えば、液晶などに用いられているITO(インジウムスズ酸化物)は導電率が数1,000 S/cmだが、PEDETの性能向上により、ITO並みの導電率と透明性が確保できれば、ITO代替候補になる可能性も出てくる。

また、導電性高分子膜は柔軟性に優れているため、曲げに強く、低温形成も可能であることから、従来製品と異なり、プラスチックフィルムを基材とした超軽量・薄型のデバイスにも適用することが可能だ。

なお、三洋電機では、今回開発した要素技術について、信頼性・耐久性に関しては、実用化されている既存のデバイスで、高い信頼性が実証されており、導電膜としての新しい応用では、固体電解コンデンサやタッチパネルなどへの適用が考えられるが、空気中の水分や酸素、あるいは、紫外線などが、有機物の劣化原因となるため、用途に応じた耐久性の確保に向け、さらなる技術開発を進めるとしているほか、有機導電膜ならではの特性を生かした応用、環境に配慮した技術としても実用化が図れるようにしていくとしている。

また、東工大では、独自の合成技術を活かして多くの導電性高分子材料の開発を行っており、PEDET以外の材料でも導電性高分子の耐熱性向上に結びつく研究成果が創出されており、それらの材料要素技術についても実用化を目指した改良を行っていくとしている。