NASAの誇る巨大宇宙望遠鏡 - ハッブル、チャンドラ、スピッツアーの3機は、それぞれ異なる波長で天体を観測する。ハッブルは可視光から近紫外線、チャンドラはX線、スピッツアーは赤外線、という具合だ。それぞれが撮影した同じ天体の画像を合成(コンポジット)すると、人類の想像を超えたダイナミックな宇宙の姿が鮮やかに浮かび上がってくる。今回紹介する1枚は、ハッブルとチャンドラの画像をコンポジットすることで得られた、1億光年先の銀河の姿だ。

おおぐま座の方向、1億1,000万光年先にある「NGC 4194」、別名「メデューサ銀河」と呼ばれる天体をチャンドラ(青色)とハッブル(オレンジ)で撮影、コンポジットしたもの。中心をメデューサの頭部に、オレンジのガス部分をヘビでできた髪の毛になぞらえている

NGC 4194は銀河と銀河が衝突して誕生した「衝突銀河」と考えられている。星雲のようにたなびく"髪の毛"はその衝撃が生んだガスの帯、そして髪の毛の上部やや左側にぽつんとある青い点は、これも衝突の衝撃から生じたブラックホールだ。青く見えるということはX線を大量に放出している証拠である。

その他の青い点は、恒星とブラックホールまたは中性子星の連星 - X線連星(X-ray binary)だと推測されている。最近の研究により、星々の誕生とX線連星の形成の間には相関関係があることがわかってきた。このNGC 4194や、NGC 7541といった銀河では、平均的な銀河より高い率で星が誕生しているが、それはX線連星の数やその明るさと関連があるという。また、X線連星では、恒星が誕生するたびに放出される大量のガスが、100万トンに1トンの割合でブラックホール/中性子星に引き寄せられることも明らかになっている。

宇宙の果てに存在するブラックホールの動きまで伝えてくれるチャンドラ - 今年7月で打ち上げから10周年を迎える。