米宇宙航空局(NASA)は3月3日(現地時間)、土星探査機「カッシーニ(Cassini)」により、土星のG環内にある直径500mほどの小衛星の存在を確認、国際天文学連合(IAU)にて同日発表した。昨年8月に初めてその存在が浮上したこの小衛星は、600日分のカッシーニの撮影画像を使って分析が行われてきたが、今回、G環の中に存在する部分環「リングアーク(ring arc)」内に小さいながらもはっきりとその軌跡を残していることが判明した。

土星の環は、内側からD、C、B、A、F、G、Eと名付けられており、アルファベットの順番が発見された順番になる。G環は1981年に発見された。カッシーニの画像解析チームに参加している米コーネル大学のMatthew Hedman氏は「土星のG環は、カッシーニが発見するまではただのチリの環で、関連づけられる衛星もなかった。今回の衛星の発見とこれまでの研究成果により、この謎めいた環について新たな事実が判明するに違いない」と語る。

G環の内部に厚さ250km、長さ15万km - G環全体の約1/6- の明るく光るリングアークが存在し、今回発見された小衛星はこのアーク内を移動している。リングアークはこの小衛星やその他多くの小天体、氷塊などが繰り返す衝突により、チリなど環の構成要素となる成分を得ていると見られている。

Hedman氏によれば、この小衛星は近隣の衛星でE環の内側を回る「ミマス(Mimas)」の影響を受けるため、不規則な運動を行っているという。

同じくカッシーニの画像分析チームに参加するロンドン大学のCarl Murray氏は「この小惑星の発見、さらにその不規則な運動が判明したことで、謎の多い土星の衛星と環の関係について新しい見識が得られそうだ」と期待を込めている。カッシーニは来年早々にもこの小惑星に最接近する予定だ。

カッシーニが撮影した土星のG環内にある明るく輝くリングアークと、その中でひときわ明るい小惑星が10分間に移動したようす。小惑星は直径わずか約500mながら、その明るさでもってはっきりと存在感を示している。あまりに小さいため、カッシーニのカメラでもって大きさを測るのは無理だったが、近くの小衛星「パレネ」(直径4km)と比較し、大きさを割り出した